IIJ主催トークイベント『IIJmio meeting #1』:

SMS対応SIMの投入で挙動が改善、MVNOによるSIMの普及の鍵は

10月19日、IIJがトークイベント「IIJmio meeting #1」を開催した。イベントでは、同社のLTE/3G対応モバイル通信サービス「IIJmio高速モバイル/Dサービス」で、10月7日より新たに提供がはじまった『SMS対応SIM』に関する話題などを同社の3人のエンジニアが解説した。

SMS対応によるメリットとは

最初に登壇したのは、法人向けネットワークサービスの開発を担当する宮本 外英氏。「iOS動作検証のまとめ」と題し、SIMにおけるSMS機能の有無によってiOS端末の挙動にどのような差が出るのか、検証結果を交えて解説が行われた。

一方、Android端末での挙動については、宮本氏に続いて登壇したプロダクト推進部の堂前 清隆氏が「最近のAndroidとMVNO SIMの関係」と題したセッションの中で、検証実験の様子も交えて解説を行った。

具体的な検証結果については、同社ウェブサイトに掲載されている「動作確認済み端末」を参照いただきたいが、例えば「iPhone 5s/c(docomo版)」の場合、SMS機能のないSIMでは3G通信のみ可能でLTE通信はできなかったが、SMS機能のあるSIMではLTEで通信できる場合があることが確認されたという。あくまで検証結果であり、LTE通信が保証されているわけではないが、SMS機能の付与が改善につながっている。

SMSに対応したメリットとして、このほか「アンテナピクト問題」「セルスタンバイ問題」の改善も挙げられた。

アンテナピクト問題とは、電波の強弱を示すアイコンであるアンテナピクトが画面上に表示されない現象のこと。セルスタンバイ問題とは、NTTドコモなどMNOのSIMで端末を利用した場合と比べて、顕著にバッテリーの消費が早くなる現象のこと。いずれも一部の端末で発生が確認されていたものだが、SMS対応SIMでは状況の改善がみられたとのことだ。

MVNO事業者を3つの点から分類

最後に登壇した、IIJmioのサービス企画・運用を手掛ける佐々木 太志氏は「MVNOのネットワークインフラについて」の解説を行った。

佐々木氏によると、現在多くの事業者がMVNOとして通信サービスの提供を行っているが、業態が非常に多様であり、以下の通り3つの点で分類が可能という。

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このうち最も重要なのは、MNO(NTTドコモなど、回線を貸し出す側)とMVNOの間にネットワーク接続があるかどうかで、ネットワークを接続することでサービスメニューや料金プランにおける独自性を発揮できるという。イベントでは、あわせてNTTドコモとIIJの接続構成概念図も紹介された。

「IIJmio meeting #1」では、エンジニアによるトークセッション終了後、実際にSMS対応SIMを体験できる時間が設けられ、イベント参加者がおのおのの端末にSIMをさして動作確認する姿が見られるなど、盛況の内に終了した。

MVNOによるSIM、さらなる普及への鍵は

現在、MVNOのSIMは家電量販店やショッピングセンターの店頭にも並べられ、手軽に購入できるようになった。総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データ」によれば、2013年6月末時点のMVNOの契約数は携帯電話・PHS・BWAの合計で1,149万で総契約数に占める割合は7%程度となっている。とはいえこの数字は、MNOでもある事業者がMVNOでサービス提供しているケースも含んだものとなっており、純粋なMVNOの契約数はまだそれほど多くないのが実情だ。

普及が進まない要因の1つに、端末の入手経路が限られる点が挙げられる。MVNO事業者の中には端末とSIMのセット販売を行っているケースもあるが、端末の種類は限られており、中古のものを使うか、海外からSIMフリー端末を購入するケースが大半とみられる。

また、利用する上での障壁の存在も見逃せない。一般的に、MVNOのSIMを利用する場合、端末にSIMをさしたあと「APN設定」を行う必要がある。設定はそれほど複雑ではないものの「サポートセンターにもAPN設定に関する問い合わせが結構寄せられている」(堂前氏)のが実情だ。端末にあらかじめ設定が登録されていればこのような問題は発生しないが、MVNO事業者による努力にも限界がある。これら課題の解決は、MVNOによるSIMのさらなる普及に向けた要因の1つと言えるだろう。

IIJ主催イベント『IIJmio meeting』取材記事