TD-CDMAという国産技術で新規参入を目指していたアイピーモバイルが自己破産を発表した。東京地裁へ自己破産を申請し、負債は債権者約110名に対し約9億円だそうだ。
同社は、2005年11月にソフトバンク(BBモバイル)やイー・アクセスとともに総務省より特定基地局開設計画の免許の交付を受け、携帯電話業界への新規参入を予定していたが、事業資金不足などの理由で何度かサービス延期を発表。今年に入り、事業の方向性を巡る社内のゴタゴタから筆頭株主が何回も入れ替わり(マルチメディア総合研究所→森トラスト→Next Wave Wireless LLC社→森トラスト→杉村五男氏)、免許返上は時間の問題と言われてきた。
IMT2000の規格の1つでありながら、世界でほとんど商用化されていないTD-CDMA技術の特性(例 アドホック)を活かすことで、「既存各社との差別化を図り、モバイルの新しい市場を切り開いて行きたい」「何故、同じく新規参入する他社はTD-CDMAからW-CDMAへスイッチするのか。それでは0からインフラを作っても全く勝負にならない」・・・参入発表当時、インタビューした際に私のノートに残っている関係者の言葉だ。
免許返上のタイミングから気になるのは、2.5GHz帯の無線ブロードバンド向け周波数割り当てとの関係だ。同周波数の獲得を目指し、現在4社が名乗りを挙げているが、選ばれるのは2社。技術方式では次世代PHS1社、モバイルWiMAX3社となっており、単純にアイピーモバイルが予定していた2GHz帯にも対象を広げればと考えるのは、当然だ。しかし、実際には次世代PHSやモバイルWiMAXには2GHz帯のプロファイルが規定されていないこと。更にはそもそもアイピーモバイルの枠は開設指針に通信の技術方式としてTD-CDMAおよびTD-SCDMAを使うことが定められていることから、一度更地にする必要もある。つまり、仮にやるにしても、それなりの時間を要するということになるのだ。
個人的には、思い切って中国が主導するTD-SCDMA技術をアイピーモバイルが当初から選択していれば、端末や設備調達、そして資金面からもうまくいったのではないかと思っていたのだが・・。これも今となっては、あとの祭りでしかない。