Column:

スマートフォン増加の功罪

 2010年は、スマートフォンが大きく躍進した年となりそうだ。各調査会社から今年度のスマートフォン市場の規模について発表されているが、弊社でもほぼ同レベルと推計している。

 最近では、iPadに代表される、タッチパネル方式で大画面のタブレット端末も順調な普及を見せているようで、これまでの携帯電話の高機能競争は何だったのかと思ってしまうほどの様変わりである。

 一方、こうした新端末の登場は、モバイルネットワークのトラフィック急増という問題も引き起こしている。スマートフォン先進国である 米国のAT&Tでは、3%のスマートフォンユーザーがネットワーク容量の40%を利用している状態で、最近になりデータ通信プランの無制限プランを廃止してしまったことは記憶に新しい。

 こうした状況は、日本も似たりよったりである。各社の関係者の話を総合すると、概ね2-3%の顧客が全体のトラフィックの半分近くを占有しているとしている。そのため各社は、SBMの電波倍増宣言よろしく、携帯基地局の増強はもちろんのこと、パケット通信速度の制限、フェムトの設置、そしてWiFiへの回避などの手を打っている。

  関係者のなかからは、 LTE時代になれば何とかという声も聞こえるが、それだけではとてもさばき切れないことは明らかだ。例えば、スマートフォン利用者の通信トラフックは、通常の携帯電話利用者の約10倍とされている。LTEになっても通信速度は、当初5倍程度しか高速化されないのだ。

 スマートフォンの比率が今後拡大していくことは明らかで、ARPU減少に悩む携帯キャリアにとっては、スマートフォンという存在はARPU増加の切り札である反面、トラフィック問題の根幹でもある。

 スマートフォン普及でますます厳しくなるトラフィックコントロールの問題をどのように解決していくのか。次世代通信ネットワークのマネジメント戦略上からも、最優先のイシューとなりそうだ。