AM:ある通信キャリアとの定例ミーティングにて。
通信キャリアから回線を借り、自ら仮想通信キャリアとなって携帯電話サービスを行うMVNOがはじまって約10年が経ったが、当初から危惧されてきた問題があった。
それが、サービスを提供するキャリア(MVNOキャリア)が何らかの理由でできなくなった場合の顧客保護である。周知の通り、ライフラインの一つである通信キャリアには、一般民間企業のように収益性の追求以外に、高い公共性が求められる。
市場の活性化を狙った総務省は、2007年2月半ば通信キャリアの反対を押し切る形で「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」を発表。待ち構えていた新規参入企業者に扉を開いた。
その後、コンサル会社や既にMVNOサービスを提供していた企業、そして小社のようなところにMVNOの相談が持ち込まれ、一時は大きな勢力になるかと期待させた。
しかし、現時点で総務省が目論んだほどMVNO加入者が獲得できたかというと、それはないだろう。ざっと推計しても数十万のレベルと思われる。
そんな中途半端な加入者しか集まらない状況下にあるMVNOキャリアにとって、オペレーションコストをペイするのが困難であることは容易に察しがつき、行き着く先は経営破綻となる。
先日、JALケータイやGIANTSケータイをやっていたインフォニックスが民事再生を申請しKDDIへ譲渡すると発表した。また、先に会社更生法を申請したウィルコムは10月より携帯電話サービスをドコモから支援を受けているソフトバンクへ切り替える。
こうした事態は高い公共性が求められるとは言え、民間企業である以上致し方ないことではある。しかし、1つ言えることは、全てはキャリア都合で起きているということだ。少なくとも、その点に関しては利用者には全く関係がないのである。
通信キャリア担当者の「MVNOキャリアの後始末は結局、回線を提供している通信キャリア(=MNO)が尻拭いするしかないということです」という言葉が妙に説得力を感じた。