Column:

動画サービス本番へ向けコンテンツ&技術プラットフォームで準備進む各社

 先日、ドコモが米パケットビデオを完全買収した旨のニュースが発表された。パケットビデオは、携帯電話向けのマルチメディアソフトなどの技術を保有する企業で、ドコモのFOMA端末90機種以上で、パケットビデオの製品「CORE Player」が搭載されている。

 ドコモは、2009年5月から有料の動画配信サービス「BeeTV」を提供しており、月額350円というリーズナブルな値付けから会員数は、2010年6月時点で125万に達するなど、これまで『不毛の地』とも揶揄されてきた動画市場で着実な成果を挙げている。

 今回のパケットビデオ買収についても、更なる動画サービス強化へ向けコア技術を確保しておきたいという狙いがあったものと推測される。

 しかし、こうした動画サービス強化の流れは、当然だがドコモだけに見られるわけではない。

 iPhone/ipadを擁するソフトバンクでは、以前よりお笑い動画コンテスト「S-1バトル」を提供しているが、2010年に入ってからだけでも8月から無料動画が楽しめるiPhoneアプリ「選べるかんたん動画2010」やセルラー網向けではないが、WiFiネット専用で「ケータイWi-Fiチャンネル」も用意されている。

 そして、5月には米UstreamとUSTREAM Asiaを設立することで合意し、iPhoneでUstreamの中継を視聴できるアプリや、中継を配信するためのアプリの提供も予定されている。

 コンテンツと技術プラットフォームの両面から着々と準備を進めている2社に比較すると、KDDIの動画事業が見えにくい印象を受ける。しかし、KDDIにはJCOMという隠し玉があり、今後同社が持つスポーツや音楽、アニメなど豊富なコンテンツを生かした動画サービスが提供されるようになれば、十分に勝算もありそうだ。もともとEZチャンネルやEZムービーなど、動画サービスでは先行してきたが、ここ数年は固定網との連携などやや異なる路線を志向してきた。

 各社の動画サービス強化へ向けたアプローチは、それぞれ異なるものの、課題であるARPU拡大の切り札となること、無線ブロードバンドの次世代モバイルサービスが控えているだけに一層注力されていく分野であることは間違いない。