日経新聞の報道によると、KDDIが11月下旬に発売する「IS03」に'禁断のアプリ'と自ら評したスカイプが搭載されるという。
以下、最近の携帯電話へのスカイプ搭載の動向について検証していきたい。
国内の携帯キャリアでは、既にスマートフォンのWiFiを使ったスカイプは広く利用されているが、報道で注目されるのは3Gという携帯電話網を使ってサービスが提供されるという点だ。
通信料収入の半分を占める音声サービスで、スカイプが利用されるようになれば、減少の一途を辿っているARPUへの影響は避けられない。
しかし、(仮にKDDIがスカイプを導入するとすれば、)それを覚悟しても導入するところに、KDDIの苦しさを感なくもないが、その一方で既に音声定額サービスの利用が広く普及していることから、影響は限定的という判断もあると推測されること。
更には、長いタームで市場や技術のトレンドを俯瞰すれば、スカイプ(=VoIP)の携帯導入の道は避けようがなく、それならいち早く導入し、その分野で先行するほうが得策という見方もできる。
その席で同社は、全世界で3Gサービスを提供しているHutchison 3グループとの提携を明らかにし、オーストリア,オーストラリア,香港,スウェーデン,英国,イタリアで実証試験を実施し,2006年中には正式にサービスを開始するとしたのだ。
その後、2007年10月にはスカイプ携帯電話「3 Skypephone」を発売したものの、その他の携帯キャリアからはスカイプ導入は自社の通信料収入を破壊する、まさに'禁断のアプリ'として総スカン状態だった。
潮目が変わるきっかけとなったのが、スマーフォンの登場である。2009年2月、ノキアは携帯電話にSkype機能を組み込むことで提携し、第一号として2009年第3四半期よりS60搭載のNseriesに搭載すると発表した。
そして、これまでスカイプ搭載に背を向けてきた携帯キャリアでも、2010年10月に米国AT&Tが、iPhone向けの3G携帯電話ネットワークをインターネット電話アプリケーションに開放すると発表したのに続き、2010年3月には米国最大の携帯キャリアであるベライゾンワイヤレスがスカイプと提携し、iPhenoを除く各種スマートフォンでスカイプアプリを搭載することとなった。
世界で最も普及しているiPhoneへのスカイプ搭載は、先に述べている通り、米国AT&TがiPhone向けの3G携帯電話ネットワークをインターネット電話アプリケーションに開放すると発表したものの、その後頓挫している。
スカイプは2010年7月にiPhone向け「スカイプ」アプリで3G回線を使った通話に課金する計画を示していたが、この決定をマイナーアップデート(新バージョンは2.0.1)で取り消してしまったのだ。
背景には、長く続くスカイプとAT&Tとの確執が伝えられている。しかし、その後米国では米規制当局の連邦通信委員会(FCC)が調査に乗り出しており、早晩解決する可能性もある。
いずれにしても、Hutchison 3のような新興キャリアではなく、米国の大手携帯キャリアで搭載の動きがはじまった意味は大きく、スカイプにとっては前進であった。
今回、仮にKDDIがスカイプ搭載を加速させていけば、間違いなくライバル各社も追随してくるものと推測される。
データ通信上でVoIPが提供されることで、常時接続が実現し、友人や同僚のオンライン接続状況を知ることができるなど、これまでの音声サービスにないサービスが開発される可能性もある。
その一方で、機能的には異なるものの、内容的には似たトランシーバ型の音声定額サービスをドコモでは「プッシュトーク」、KDDIでは「Hello Messenger」という名称で投入したものの、共にサービス停止に追い込まれた歴史を持っている。
導入以上に、サービスイン後の利用度が気になるところではある。