ソフトバンクの傘下に入り、東京地方裁判所に提出していた更生計画が認可されたウィルコム再生の一歩として、毎月の基本料と別に980円の追加料金を支払えば同社の加入者同士だけでなく、他社の携帯電話や固定電話への国内通話も無料となる「だれとでも定額」を始めることとなった。12月3日より開始する。
オプションサービス「だれとでも定額」(月額980円)に加入すると、ウィルコム以外の携帯電話や一般加入電話、IP電話への10分以内の国内通話が、月500回まで無料で利用可能となる。10分を超過した場合は利用料金コースに応じた通話料がかかる。500回を超過した場合は21円/30秒の通話料金となる。
もともと同サービスは会社更正法の影響を受けないウィルコム沖縄が4月9日~5月31日(受付期間)の期間限定で提供した結果、5月末時点での契約数が2,500件純増の40,500件(対前月比6.6%増)を記録。全国的な反響の大きさから9月からは新たに北海道/宮城/広島で同様のサービスが試験という位置づけで提供されてきた。
再生への道筋が二転三転し、ウィルコム自身が意思決定できる範囲が狭まるなかで、支援する親会社のソフトバンクは他社を含めた完全定額は世界初の画期的なサービスであるものの、一時的に加入者が増加しても採算割れが濃厚ということで、同サービスの商用化には消極的だったとされるが、あえてGoサインを出した理由に興味を抱く。
勝手に推測すれば、再生にあたり何よりもピーク時(2007年7月の465万人)から100万弱の顧客流出という止血対策を優先する必要があったのではないだろうか。
一方、複数の関係者からは、ソフトバンクによるウィルコム買収の狙いについて様々な意見を伺っているが、整理すると以下のようになる。
・370万の顧客基盤
・PHS基地局エントランス回線のSBTへのスイッチによるSBグループシナジー
・16万局のPHS基地局の携帯基地局向け用地としての活用
・周波数の獲得
更生計画案では現行PHSを展開しているウィルコムへのソフトバンクの出資金額は3億円しかなく、ヒットしている「iPhone」の顧客獲得コスト約5万円/台という前提に立てば、決して悪くない買い物ではなかったか。
もともとPHSサービスは、2000年から2004年までのKDDI時代は親会社との競合を敬遠され、データ通信を主軸にした展開を押し付けられながらも加入者を増加させてきた。2004年には米投資会社が買収し、独自のポジションを確立することに成功。しかし、その後ソフトバンクの音声定額、イー・モバイルのデータ通信定額サービスの攻勢を受け一気に失速。更には次世代PHS事業への投資負担も重なったことで経営悪化が表面化し、今年2月会社更生法の適用を申請した。
このようにウィルコムの失敗は、弱肉強食のサバンナで体の小さい小動物が大型の肉食獣に狙われるがごとくという側面はあったにせよ、本質的な問題はコスト削減を優先するあまり、果敢に仕掛けていく力が弱かった(=無かった?)ことに尽きるのではないかと思う。
言い方としては誠に失礼ながら、外部から社長を招いた一時期を除けば、PHSラブ(LOVE)な人達が集まり常に『守り』の視点で事業にあたっていたような・・・。
その意味で、今回の新サービスはインパクトを持って市場では迎えられるのではないだろうか。新生ウィルコムの復活に期待したい。