焦土化した先に見える携帯市場の変化の予感

 年間純増数のうち3割以上を稼ぎ出すビッグウェーブ(=年度末商戦)を前に携帯各社の戦闘準備が整いつつあるようだ。何せ最も契約者を獲得できる時期とあって、各社一斉にキャンペーンを打ち出し地引網の如く加入者獲得を狙っている。しかし、逆にここでしくじれば、同じ規模の魚場は来年まで持ち越しとなり、まさに死活問題となる。

 特に、今年のビッグウェーブの結果次第では、携帯市場の競争構図が根底から変わる可能性があると指摘する関係者が多く、その意味でも注目されている。

 年度末商戦へ向け、まず動き出したのがソフトバンク傘下に入ったウィルコムだ。純減状態からのV字回復を目指し、2010年12月3日より他社携帯や固定電話宛の通話が、オプション契約の月額980円で定額となるサービス「だれとでも定額」を開始。

 それまで自社網内の無料通話に限定されてきた競争市場を更に一歩広げた。ソフトバンクでは3ヶ月以内の純増を公約に掲げているが、まだその兆しは見えない。

 2011年からは次の矢として、ウィルコム加入者からの紹介を受けたユーザーが新規契約で「だれとでも定額」に加入すると、紹介者と新規加入者の「だれとでも定額」が一定期間無料になる「『だれとでも定額』ご紹介キャンペーン」や、新規契約時に2回線目の「新ウィルコム定額プランS」の月額利用料が無料となるキャンペーン「もう1台無料キャンペーン」を開始するなど、てこ入れを急いでいる。

 これに対抗する形で同じような他社間通話料金無料化のキャンペーンを展開しはじめたのがイー・モバイルだ。新たに投入するスマートフォンを対象に毎月の基本料と別に月1,820円の追加料金を支払えば、同社の加入者同士だけでなく、他社の携帯電話や固定電話への国内通話も無料となる。

 また、イー・モバイルの本丸であるデータ通信系では、月額2,980円でフレッツと2時から20時までのモバイルデータ通信が利用できる「フレッツ+昼割モバイル」を新たに1月20日より開始した。純増数で2ヶ月連続UQ WiMAXに追い抜かれており、早期のてこ入れ策が必要となっていた。
 
 一方、大手サイドはどうか。ドコモ、KDDIの2社は昨年と同様に学生やその家族を対象とする携帯電話加入キャンペーンを展開。ドコモは月々の利用料から毎月390円から利用でき、最大3年間(最大37カ月)割引となり、端末がスマートフォンを利用している場合は、「パケ・ホーダイ シンプル」の利用料が525円割引され、月額最大5,460円で利用できる「応援学割」を提供する。

 KDDIは基本使用料から最大3年間、毎月390円を割り引く「ガンガン学割」の他、「auひかり」を新規契約しauケータイとの「KDDIまとめて請求」に申し込むと、2011年7月利用分から2012年6月利用分 の12カ月間、同一請求グループ内に含まれるすべてのauケータイの基本使用料から月額390円を割り引く「auひかり de ケータイ割引」を5月末まで展開する。

 現時点では、いつも奇抜なキャンペーンで注目を集めるソフトバンクがまだ目立った動きを見せていないが、遠からず発表されることだろう。

 パケット定額制⇒ガラケー高機能化⇒MNP⇒自社網内通話無料化⇒データ通信カードのPCセット販売⇒スマートフォン⇒LTE⇒SIMフリー化と目まぐるしく競争環境が変化するなかで、この会社しかできない独自のサービスという領域は驚くほど少なくなってきている。

 問題は、それぞれの会社がやるかどうかの判断だけだとすると、ますます上位にいる携帯会社の力加減次第という気もしてしまう。

 市場が焦土化した先の新たな変化について、今年は特に注目したい。