やはりというか、やっとというべきか。
ソフトバンクは世界最大手の中国チャイナモバイルやインド・バーティエアテル、英ボーダフォンと組み、次世代携帯電話技術の推進団体「グローバルTDーLTEイニシアチブ」を設立すると発表した。
傘下に収めた次世代PHS事業でTD―LTEと互換性を持たせるというもので、商用サービスを今年中に開始すると宣言した。
「TD-LTE」は、3GPPではLTEの「TDDモード」として、「FDDモード」と同時に3GPPリリース8で2009年春に策定されている。
両者は、基本的に同一規格で物理レイヤとMACレイヤは異なるものの、下りがOFDMA、上りがSC-FDMAを採用する。また、運用帯域幅も1.4、3、5、10、15、20MHzをサポートと共通で、上位レイヤは非常に似通っている。
具体的には、端末チップや基地局装置はソフトウェアの変更で対応可能となっており、基地局や端末の開発を担うベンダーにとっては開発リソースの多くを共通化できるというメリットがある。
「TD-LTE」のパワーは、今回参加を表明した携帯キャリアの抱える11億人という数からして、今後大きな勢力になることは間違いなく、一部には遠からずWiMAXを吸収するという見方が強くなっているほどだ。
次に、PHSのインフラを「TD-LTE」にスイッチしようとするソフトバンクのメリットを見ていこう。
今更言わずもがなだが、「TD-LTE」を選択することで、
・世界市場から基地局や端末を安価に調達できる
・「TDD」と「FDD」のデュアルモード端末が容易に開発可能
・その結果、自ら唯一の弱点とするネットワークインフラの増強が実現
ということになる。
「TD-LTE」導入にあたって、課題となりそうなのが、もともとXGP採用で認可していた2.5GHz帯について、総務省がどう判断するかということになりそうだ。
ソフトバンクは、総務省への利用申請に際してTD-LTEという言葉は極力使わず、名称を次世代版XGPなどとしながら進めるとみられるものの、改めて審査をするという可能性がない訳ではなさそうだ。
更に言えば、2.5GHz帯はウィルコムに割り当てたのであって、ソフトバンクが事実上一体運用するということになれば、話が違うという意見も出てきそうだ。
但し、同じく2.5GHz帯向けにモバイルWiMAXを展開しているUQコミュニケーションズは、他社へのMVNOをやりはしているが、KDDIとの一体運用が行われているのも事実であり、同じくMVNOの義務付けでソフトバンクに認可という展開もありそうだ。
いずれにしても、苦境に陥り引き取り手がなくて最後に駆け込んだのがソフトバンクであり、総務省に筋論をどこまで通す気概があるのだろうかという気もする。
ソフトバンクのパワーが更に増強されていくことだけは、間違いなさそうだ。
【関連情報】
Column:3.9Gの本格競争前に早くも選定された4Gの技術規格
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Column:復活の狼煙を上げたウィルコムの切り札投入
https://www.mca-mbiz.jp/news/2010/12/post-37.html
Reserch Note:海外の再編の影響受け地殻変動進む国内モバイルインフラ市場
https://www.mca-mbiz.jp/news/2010/09/post-21.html
Reserch Note:日本へのTDD-LTE導入の可能性
https://www.mca-mbiz.jp/news/2010/09/post-19.html