現在、モバイルキャリア各社は急増するトラヒックに対し、さまざまな施策を実施しています。各社の施策を大まかにまとめると、(1)ネットワーク容量の拡大・効率化、(2)トラヒックコントロール、(3)データオフロードとなります。
NTTドコモはLTEサービス「Xi(クロッシィ)」への移行や新たな周波数帯の獲得、小ゾーン・セクタ細分化といったネットワーク容量の拡大・効率化、ヘビーユーザに対する通信速度制御、2012年10月開始予定のXiの速度制限・段階型料金プランのトラヒックコントロール、Wi-Fiサービス「Mzone」やフェムトセル、宅内Wi-Fiの活用といったデータオフロードを推進中です。
KDDI(au)が推進している「3M戦略」の"M"には、さまざまなコンテンツやサービスを利用できるマルチユース、いつでもどこでも最適なネットワークを利用可能なマルチネットワーク、好きなデバイスで利用できるマルチデバイスの"M"が込められています。ユーザはサービスやネットワーク、デバイスに制限されず、ユビキタスな利用が可能になります。
ソフトバンクモバイルは基地局の小セル化や新たな周波数帯の獲得などネットワーク容量の拡大・効率化、ヘビーユーザに対する通信速度制御といったトラヒックコントロール、駅の周りにWi-Fiを広めるデータオフロードを実施しています。
これまで各社はフィーチャーフォンを重点に置いた端末戦略を推進してきましたが、現在ではスマートフォンへのシフトを進めています。スマートフォンのトラヒックはフィーチャーフォンの10~20倍とされ、確かに各社が積極的に行うネットワーク容量の拡大・効率化とデータオフロードは重要であると考えられます。また、これらの対応はキャリアによる設備投資で賄うことが可能です。
ただ、ソフトバンクモバイルが嘆くように、いくらネットワーク容量を拡大したとしても抜本的な解決には至らず、いたちごっこの様相となります。本来、トラヒック逼迫の要因はユーザ側にあるため、ネットワーク容量の拡大やオフロード先の拡充よりも、いかにヘビーユーザのトラヒックコントロールを行っていくかが重要ではないのでしょうか。
しかし、トラヒックコントロールを行うことはユーザへ負担も伴います。そのため各社は重点的にネットワーク容量の拡大やオフロード先の拡充を図っているのでしょう。それでも将来的なトラヒック逼迫を考えると、自社内の携帯電話ネットワークを守るため、早々にヘビーユーザのトラヒックコントロールや他キャリアへの流出が必要かもしれません。
キャリア各社におけるトラヒック増への対応策
NTTドコモ
●Xiへの移行(NW容量の拡大・効率化)
●新たな周波数帯の獲得(NW容量の拡大・効率化)
●小ゾーン化やセクタ細分化(NW容量の拡大・効率化)
●ヘビーユーザに対する通信速度制御(トラヒックコントロール)
●Xiの速度制限や段階型料金プラン(トラヒックコントロール)
●Wi-Fiやフェムトセル、宅内Wi-Fiの活用(データオフロード)
KDDI(au)
●3M戦略の推進(NW容量の拡大・効率化やデータオフロードなど)
・マルチユース(さまざまなコンテンツやサービスを利用可能)
・マルチネットワーク(いつでもどこでも最適なNWを利用可能)
・マルチデバイス(好きなデバイスで利用可能)
ソフトバンクモバイル
●基地局の小セル化(NW容量の拡大・効率化)
●新たな周波数帯の獲得(NW容量の拡大・効率化)
●ヘビーユーザに対する通信速度制御(トラヒックコントロール)
●駅の周りにWi-Fiを広める(データオフロード)
関連資料
「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」
~キャリアの視点から2015年度の携帯電話市場を総合的に分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/forecast2015.html
「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測」
~基地局市場をキャリア・メーカー・エンジニアリング会社等多角的な視点からトータルに分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/mobileBasement&PartsMarket2011.html