携帯電話市場とひとくちに言っても、国内の地域ごとでその状況は大きく異なっている。都市と地方でスマートフォンの普及率に差が出ていることは周知の通りだろう。
そこで今回、東海地方の市場状況を探るべく、東海地方を中心にキャリアショップを展開するほか、全国のエディオングループ店舗の携帯電話コーナーの運営も手掛けるエディオンコミュニケーションズの取締役副社長 佐藤 篤氏と営業本部 営業戦略部 部長 堀 恭寿氏にお話を伺い、携帯電話市場の状況や、同社の事業展開などを語っていただいた。
その模様を前編・後編の2回に分けてお伝えする(前編はこちら)
家電量販店で冷蔵庫や洗濯機を販売する場合、指名買いをされるお客様を除けば、ほとんどのお客様は何時間も比較検討をして購入するのが当たり前なんですね。なかには、1日じっくり見て、さらにいったん家に帰って検討して、翌日もう一度来店されて購入に至る、といったこともままあります。
そういった家電の販売現場を経験している人間からすれば、携帯電話をお買い求め頂く際の接客時間が長いという発想は出てきません。逆に今までは接客時間が短く済んだだけの話であって、長くなることが即問題ではないと捉えています。
各エリアで、携帯電話販売の担当者だけを集めた会議を数ヶ月に一度開催していますが、その場でも接客時間が長くなることに対してネガティブに捉えなくてよいことを説明しています。話をしていると、量販店担当の人は理解してくれるのですが、キャリアショップ担当にとっては腑に落ちない印象を抱いている者も見受けられます。
ただし、接客時間が長くなることを全く問題視していないかというとそうではありません。
接客時間が長くなることで、結果的にお客様の待ち時間が長くなっている部分については危機意識を持って対応しています。店舗での待ち時間を短縮させるため、スタッフやカウンターを増やす、予約制を導入する、カウンターを用件別に分ける、などいろいろな実験を行っています。まだ「これだ!」という解決策が出ていないので、試行錯誤しているのが現状です。
繰り返しになりますが、ユーザロイヤリティ、お客様満足度という面からの施策であって、店舗運用の効率化のために接客回転率をアップさせるような方向からのアプローチではありません。
回転率とは話がそれますが、弊社では、2002年に手話・筆談対応の聴覚障害者専用コーナー「デフ・ドリーム・ショップ」を開設しました。お客様目線に立って考えた結果、そういうお店は絶対に必要であるとの思いから運営を開始しました。
また聴覚に障がいのある方を店舗スタッフとして雇用もしています。
手話ができる健常者だけではなく、障がいがある方がスタッフとして接客をするのは全国的にも珍しいと思います。これもユーザロイヤリティを考えての施策になります。
エディオン本体の法人営業部など外商部門とお取り引きいただいている企業に対して法人携帯を提案する営業活動を進めるべく、今年度は法人営業の陣容を倍増させることを検討しています。
安さだけで契約いただいた法人のお客様は、いずれは値段でひっくり返されてしまう可能性がありますので、それを防ぐために重要になってくるのがソリューションだと考えています。
フィーチャーフォンの時代にもソリューション提案はありましたが、実際に提案しようとするとノウハウを持つ企業を探したり、あるいは自社で開発したりと手間とコストがかかっていました。
スマートフォンやタブレットでは、すでにパッケージ化されたソリューションが数多くありますので、それぞれのお客様に適したものが提案しやすくなりました。
パナソニックが昨年秋に発売したエアコンの新製品は、発表段階ではスマートフォンで外出先から運転オン・オフを遠隔操作できる機能を盛り込んでいましたが、電気用品安全法の技術基準に確実に適合させるため、発売前に運転オンの機能を削除しました。
技術的には確立されているものが、法律が壁として立ちはだかったために製品化できなかった事例ですが、現在経済産業省が電気用品安全法の解釈見直しを進めており、早ければ4月にも改正案が施行されると報道されています。スマート家電という言葉は従来からありましたが、法整備が整って本当の意味でのスマート家電が登場すると期待しています。
見直しを機に、スマートフォンで操作できる家電が各社から続々と発売されることが予想されますので、今後はスマートフォンと家電の融合を見据え、家電量販店グループならではの販売ができればと思っています。