NTTコミュニケーションズ:

中小企業市場開拓に向けた新たなチャネル開発の試み

NTTコミュニケーションズが今年2月、中小企業やSOHO市場に対する法人向け通信サービスのオンラインショッピングサイト「NTTコムストア」を開設したと発表した。

インターネット・電話・クラウドなどのICTサービスの他、パソコン・プリンタなどのICT機器・ソフトウェアを簡単に購入できるという。

これは固定・モバイルキャリアを問わず、これまであまり手をつけてこなかった中小企業市場開拓に注力する各社の流れに沿うものであるが、その中でも特に50名以下の小企業SOHO市場をオンラインショップでカバーするという新しい試みといえる。

ネットワークサービスにおける法人市場は、これまでは比較的大手の企業が中心であった。その大企業市場はマーケットも限られ競争も激しく、相対合戦もありキャリアにとってはうま味の少ない市場であった。

そこでこれまでは未開拓であった中小規模の企業を新たな市場として開拓する動きがここ数年活発化している。

NTTコミュニケーションズは今回の施策前の2011年に大幅な法人組織の変更を行い、中小企業を専門に担当する営業部を作っている。NTT東日本・西日本も「オフィスまるごとサポート」などの新サービスを準備し、中小SOHO市場の開拓に動いている。NTTドコモも数年前に中小規模企業を担当する第三法人営業部を立ち上げた。KDDIは全国各地に「KDDIまとめてオフィス」を設立し、同様に中小規模企業の開拓に余念ない。ソフトバンクグループは傘下のソフトバンクテレコムを法人営業部隊と位置づけ、新規に法人モバイルインターネット営業本部を立ち上げやはり中小規模企業に営業攻勢をかけてる。

KDDIもソフトバンクテレコムも企業数の多い中小企業を対象にするため、大量の営業員を新規に採用している。

各社が中小企業開拓で苦労しているのが営業効率の悪さである。大量の営業員を動かすが、1件当たりの売上高は小さいのでテレマーケティングなどを駆使しながら機動力を上げる努力を続けている。「KDDIまとめてオフィス」は当初100名以下の企業を対象にしていたが、全国展開を契機に500名以下の企業にターゲットを拡大している。これも小規模企業だけでは採算が合わないと考えたからであろう。また中小企業のニーズに対応するために、回線サービスだけではなく複合機などのオフィス機器も扱っている。

このように中小企業開拓では、法人営業の基本である訪問営業は手間やコストかかりなかなか採算ベースに乗りにくい。

NTTコミュニケーションズのオンラインショッピングサイト「NTTコムストア」はこれら中小企業、特に小規模SOHO市場の開拓において人手をかけず効率的な方法を試みるものとして注目される。

「NTTコムストア」では、インターネット接続やIP電話、FAXソリューションなどの通信サービスから、ホスティングなどのクラウドサービス、グループウエアなど多彩なICTサービスが購入できるという。また、パソコン、プリンター、ソフトウエアなどのICT機器、デジタル家電など約40万アイテムを取り扱っている。

Webのみで申込み手続きは完結できるが、問い合わせについては、その役割をチャットという形で対応し専任オペレーターがリアルタイムで答えるという工夫をしている。電話のように待たされることや、メールのように何通もやり取りする手間がかからない利点があるという。

通信サービスのオンラインストアは初の試みであり、まだまだ改善や工夫の余地はあると思われるが、中小法人市場開拓の新たなチャネルとして今後の行方を見守りたい。