スマートフォンは個人利用を中心にここ数年で急激に市場を拡大してきているが、その一方で法人市場についてはいまだにフィーチャーフォンが根強い人気を誇っている。特に数百台・数千台単位で導入している大手企業ではスマートフォンや・タブレットの導入は思いのほか進んでいない。
法人市場においてスマタブの利用が進まない理由は幾つかある。
セキュリティーの問題・既存社内システムとの連携の問題・利活用(本当に必要か)の問題などが指摘されるが、やはり最大の問題はコストであろう。一般にフィーチャーフォンからスマホに変更すると一台あたり月額で2000円程度のコストアップにつながるとされている。数台程度ならば業務効率化などで何とかコストを吸収することも考えられようが、数百台・数千台のレベルになると事は簡単ではない。ランニングコストは数百万円単位で上昇するのだ。
大手企業がスマタブの大量導入を躊躇すのは、コストアップに見合う効果を得られるかもう一つ確信できないところにある。
この点はキャリア側にも問題がある。MDM導入に代表されるセキュリティー課題の克復、スケジュール管理や名刺管理・リモート業務環境など各種グループウェアの提案、クラウド環境の構築などスマートデバイスを活用するメニューはそれなりに取り揃えてはいるが、ユーザーに対してコストに見合うベネフィットを訴求し切れていないのが現状だ。
そのような市場環境にある中で、NTTドコモが今年9月10日に、企業利用に特化した「法人向けスマートフォン(仮)」を12月~2014年1月の間に発売するとの発表があった。「法人向けスマートフォン(仮)」は富士通が提供するという。今回の発表で特徴的だったのが、前述の通り法人のスマホ導入で最大の課題となっているパケットデータ料金にビジネスプランを導入したことである。「Xiパケ・ホーダイ for ビジネス」は月500MBまでのパケット量が月額2980円の定額で提供される。現在提供している「Xiパケ・ホーダイ ライト」と比べて1955円(税込)安い月額料金となっている。但し、当月に利用したパケットデータ量が500MBを超えた場合、当月末まで通信速度が送受信時最大128Kbpsとなる。
当該法人向け端末は料金以外にも法人が使いやすい機能を提供してる。電話やメールなどの基本機能が使いやすい専用のユーザーインターフェース、セキュリティ面では、情報漏洩を防ぐための指紋認証機能「スマート指紋センサー」やパスワードを一括管理できる「パスワードマネージャー」を採用するとしている。
さてこの料金プランがどこまで大手企業の法人需要を喚起するか注目したい。
と言うのはスマタブの導入が進んでいない大手企業の通信料金は、キャリアとの相対契約で値引きを受けている事が多いからである。実際に提供されている相対料金は知るべくもないが公表されている定価に対して、かなり大幅な値引きがされていることは想像に難くない。その相対料金と今回提供されるビジネスプラン料金は大手企業にとって魅力的なものなのかが気になる。もし大手企業が魅力を感じないのであれば、それは一部で行われた過度な料金値引き競争が影響しているともいえる。
いま法人市場は中小規模が主戦場となっている。当然今回のサービスは中小規模企業も視野に入れたものと考えるが、戦況が不利なドコモはこの新サービスでどこまで挽回できるか注視したいと思う。