これまでモバイルキャリアは、端末からインフラ、サービス、そして流通まで一気通慣で管理する生態系の頂点に君臨することで、業界の住人やネットワークサービスの最適化を図ってきた。
しかし、第三者が開発したスマートフォンが登場するや、そのモデルは急速に瓦解する。
端末と通信料金の分離などの影響もあり、販売手数料や加入手続きなどの際に支払われる支援費が年々減少し、流通を担う販売代理店は経営に行き詰まり、ここ1.2年は中小の撤退とともに、大手同士の合併が頻発している。
長く国内ベンダーの独壇場だった端末市場では、スマホの普及とともに波が引くかのように撤退や合併が相次ぎ、代わってアップルやサムスンといった外資系ベンダーが勢力を伸ばしている。
厳しさという点では、コンテンツ分野でも変わらない。スマホの普及で公式サイトのようなリスクがない商売は細り、今は数千万円から億単円位でメガヒットを狙うしか生き残れない博打型の市場に様変わりしてしまった。
このように変化の波は、モバイルキャリアの周辺で起きているように見えるが、実はこの間、モバイルキャリアの本業をの儲けを示す営業利益率に大きな変化はない。
つまり、言い方としては適切でないかも知れないが、この収益維持は、モバイルキャリアが周辺を巧みに調整することで確保してきたという見方もできるのである。
その意味で、スマホ時代となって、モバイルキャリアのパワーが落ちて、影響力がなくなったとする論調は、間違いである。一定の収益を確保するための財布を幾つか持っていたが、それが少なくなっているという捉え方が正確ではないだろうか。
iPhoneが最終的に日本でどこくらいまで普及するのかわからないが、仮にスマホがフィーチャーフォンを駆逐し、その半分はiPhoneとなれば、今更外資系云々と言ってもという声があることは重々承知の上で、アップルが日本で最も個人情報を持つ会社になるのかも知れない。
実は、アマゾンなどのOTT(Over The Top)企業の多くは、日本であれだけの商売をしていながら日本にはお金が落ちる仕組みになっていないのは有名な話である。
話を元に戻そう。とにかく現状は競争に勝つために各社かiPhoneに頼っているわけだが、その先にある世界が日本の社会や産業にとって木や植物が朽ち果てた焼け野原になっていないことを祈るばかりである。