スマホステーション:

スマートフォン修理における、メーカー修理にはないサードパーティー修理の優位性とは

NTTドコモが取り扱いを開始したことでさらなる普及が見込まれる「iPhone」シリーズ。普及にともない修理の需要も拡大している。しかし、実際に修理を受け付けるApple Storeやアップル認定ショップは店舗数が限られているのが実情だ。

そんなiPhone利用者の不満を解消すべく、端末の故障に即応できる修理事業者に注目が集まっている。

そこで今回、池袋や吉祥寺などに修理ショップ「スマホステーション」を構えるスマホステーション株式会社の代表取締役 猿谷 吉行氏にお話を伺い、iPhone修理ビジネスの現状や同社の事業展開などを語っていただいた。

その模様を前編・後編の2回に分けてお伝えする。

スマートフォン修理の実態は「パーツの交換」
パーツの仕入れがビジネスの鍵に
――まずは御社の事業内容について教えてください。
猿谷氏:
スマホステーションは現在、スマートフォンの修理などを行う店舗「スマホステーション」の運営・FC展開、スマートフォンのデータ復旧サービス「スマホデータレスキュー」、法人向けのスマートフォン保守サポートサービス、の3つが事業の中心となっています。スマホステーションの店舗では、修理のほか、初期設定・アプリ設定のお手伝いも行っています。


弊社はもともとアールアンドティー株式会社という社名だったのですが、2013年3月に社名を現在のスマホステーションに変更しました。キャッチフレーズに「スマホなんでも相談室」を掲げ、スマートフォン関連ビジネスへのフォーカスを明確にしました。

――「スマホの修理」と聞くと、熟練した技術がないと難しいイメージがあります。
猿谷氏:
修理のために高度な作業が必要な印象をもたれるかもしれませんが、我々が行っているのは、正確に表現すれば「修理」ではなく「パーツ交換」になります。


昔の機器は、ハンダごてを使って壊れた個所の電子部品を付け直して「修理」するのがスタンダードだったと思います。しかし現在では各部品が非常に小さく、また密集しているため従来のような修理作業は難しく、壊れた個所をまるごと取り替える「パーツ交換」が対応の中心となります。


実のところ、パーツ交換の方法自体はそれほど難しいものではありません。極端な話ですが、時間さえかければどなたにでもできるものだと思います。ただしビジネスとして考えると、1台の修理に何日もかけたら採算が合いません。


修理ビジネスで肝となる部分は、誰もが一定の時間内に交換できるようにするための手法といいますか、土台を構築するところではないかと思います。

――マニュアル類の整備ということですか。
猿谷氏:
そうなんですが、マニュアルといっても、そこに記載されている手順が複雑だと習得に時間がかかりますし、ミスが発生する確率も高くなります。マニュアルには、誰が見ても分かり、実作業において間違いがおきないワークフローを盛り込まなければ意味がありません。


ネジを例に挙げると、我々のマニュアルではネジひとつひとつに番号を振っています。また、ネジが何番のものかすぐ分かるよう、外したネジの置き場所もきちんと定めています。外す順番と外したあとの置き場所を明示することで、手順に従い作業すれば紛失や誤認などの間違いは起きません。


以前パソコンの修理事業を手掛けていたことがあり、そこで培ったノウハウをスマホ修理にも活用しています。パソコンの修理も、パーツ交換での対応が基本でしたから。

――パーツ交換で修理する場合、パーツの入手が鍵になりますね。
猿谷氏:
交換用のパーツはスマホメーカーから購入できる類いのものではありませんから、信頼できるパーツ製造メーカーを探さなければなりません。


弊社は、日本で初めてiPhone修理専門ショップを立ち上げたアイラボファクトリー株式会社と2013年9月に業務提携し、交換用パーツの仕入れ共同化を行いました。2社が一括で仕入れることでボリュームディスカウントにも期待しています。業務提携は仕入れの部分だけでなく、修理技術の共有やサービスの相互協力も進めています。

修理受付店舗数、修理費用、修理後の再設定の有無など
サードパーティー修理には多くの優位性が
――修理は各携帯キャリアショップでも行っていると思います。携帯キャリアショップやメーカーによる修理とサードパーティーによる修理を比較した場合、どのような違いがありますか。
猿谷氏:
まずiPhoneの場合、そもそも修理対応でドコモショップやauショップ、ソフトバンクショップが窓口になることはありません。対応はアップルの管轄になっており、アップルの直営店であるApple Storeかアップル認定の正規サービスプロバイダが窓口になります。しかし国内の店舗数は限られているのが現状で、修理のために遠出しなければならない煩わしさがあります。


また、店頭では基本的に電話機本体の交換で対応するため、アプリやアドレス帳などを一から再設定する必要が生じます。弊社の場合、修理が必要な部分のパーツを交換してお返ししますし、端末内のメモリーを操作することはありません。店頭で受付後その場で修理し、修理が終われば以前の状態ですぐに使用できるメリットがあります。


もう1つ、修理費用も大きなメリットだと思います。修理内容によって変動しますが、多くの場合、通常の修理費用と比べて半額程度で済みます。

――Android端末の場合はいかがでしょうか。
猿谷氏:
Android端末も、iPhoneと同じように修理することができます。ただし、端末の種類が非常に多いため、すべての端末に対応しようと思うと交換用のパーツ類を大量にストックしなければならず、iPhoneに比べてビジネス展開が難しい部分があります。


それ以前の問題として、パーツが安定的に手に入りません。どうしても直して欲しいというお客様がいらっしゃった際には、修理する端末と同型の中古品を探してきて、その端末からパーツを取り出して交換したこともあります。


また、Androidの場合はiPhoneと違って携帯キャリアショップが修理窓口になるのでサポートも充実しており、サードパーティー修理に対する需要はiPhoneほど多くないと見ています。

後編に続く)