前編に引き続き、携帯電話・スマートフォンのリサイクルやリユースの状況について、一般社団法人情報機器リユース・リサイクル協会(RITEA)専務理事 小澤 昇氏にお話を伺った模様をお伝えする。
後編では、情報機器をリユースやリサイクルに出す際に重要になってくる「データ消去」や、適正な処理を行う事業者の認定制度などについて取り上げたい。
「データ復旧事業者でも復元できない」こと
機器にはいわゆる「オールリセット」機能は搭載されていますが、この操作だけでは完全にデータが消去されるわけではないため、リユース・リサイクルにあたりデータ消去ソフトを使った消去作業は必須といえます。
とはいうものの、データ消去ソフトウェアは数多く販売されており、安心して使えるソフトかどうかを各事業者が見分けるのは困難でした。
そこで、スマートフォンのデータ消去ソフトウェアに関して認定を行うことを決めました。もともとRITEAでは、パソコンに内蔵しているハードディスクドライブ(HDD)のデータ消去についての評価認定を2008年2月から行ってきた実績がありましたので、そのノウハウを活かしています。
スマートフォンデータ消去ソフトの認定では、海外メーカの端末も多いことからメーカへ依頼するかたちではなく、大手データ復旧事業者にデータ復旧を試みてもらい、復旧できないことが明らかになったソフトに対して認定を行っています。
実際の調査項目については、データが消去されているか、スマートフォンのOSに依存せず消去できるか、消去後に消去証明書ないしログデータが記録できるか、など5項目から構成されています。具体的な調査項目は当協会のウェブサイトでも公開しています。
ちなみに、データ復旧事業者側では、内蔵メモリを取り出し、メモリリーダにそのメモリを載せ替えた上でデータが復活できないかをチェックするほど厳密な検査を行ってもらっています。
市場の健全な成長に寄与
リユース事業者に関しては2008年6月から「RITEA認定情報機器リユース取扱事業者」制度を、リサイクル(再資源化)事業者に関しては2009年6月より「RITEA認定情報機器リサイクル(再資源化)取扱事業者」制度を開始しました。
認定は事業者単位ではなく、事業場単位で行っています。全国に複数の拠点を有する事業者の場合、それぞれの事業場へ現地調査に赴いて審査を行っています。
現在では、一部地方自治体が保有物件の売却を行う際、当協会の認定資格保有者を入札条件にするところもあり、認定制度が定着しつつあると実感しています。
以前はチェックリストも公開していたのですが、それをみて「RITEA準拠」と銘打つ事業者が出てきたため、非公開としました。我々としては、あくまで第三者が実際に現地調査を行うことに意味があると考えています。また、認定事業場を定期的に再訪することで基準が維持されていることを確認する仕組みも取り入れています。
情報機器のリユースやリサイクルを行う場合に知っておくべき法令や実務の内容、データ消去の必要性とその概要などを問う内容となっています。
出題範囲は、当協会が編纂した「情報機器3R&データ消去ガイドブック」から出題しています。既存の出版物では全体をカバーするものがなかったため、関係省庁の協力も仰ぎつつガイドブックとしてまとめることができました。検定開始からまもなく1年がたちますが、現在では、合計で約500名の方が受験され、約430名の方が合格されています。
法律等が改訂される可能性を考慮し、資格には2年間の有効期間を定めています。
事業場、データ消去ソフト、人材に対する認定制度を設けることが、情報機器のリユース・リサイクル市場の健全な成長の一助となればと考えています。