今こそ『顧客ファースト』のススメ

1.大本営発表の限界

インターネットの普及は、あらゆる意味において供給者と需要者の距離を短くしただけでなく、時には需要者が供給者となるような事態も生んでいる。

例えば、私達がやっている情報を提供するという仕事であれば、昨日まで端末の回路設計をやっていた人がブログを立ち上げ、それを生業としている人よりも優れた情報を提供するといったことが日常的に起きている。

こうしたことは、モバイル産業でも全く同じてある。キャリアがチャンピオンだった時代は、大本営発表よろしく、情報は一方通行で、顧客に検証や精査、別の選択肢という道は非常に限られていたように思う。

しかし、今やネットをググれば、様々な情報にアクセスでき、大本営発表の真偽のほどを個人レベルで推し量ることが可能となった。それだけではない。仮にキャリアにとって不都合な事実が流れ、それがマスコミであまり伝えられないとわかると、何か操作や圧力が・・・。というように、逆に情報が伝播して行くような事態も起きている。先ごろ、あるキャリアがクレジットカードの個人情報が漏れるという深刻な事態を起こしたのに、マスコミが沈黙したケースは、まさにそうだろう。

また、あるキャリアショップでは、ゼロ円で端末を提供する代わりに、10万円以上のオプション加入をさせられたとニュースになったが、地方の小さなお店で起きていることが、一瞬にして日本中に伝播する時代なのだ。

問題の本質は、これまでのように『キャリア都合で事が動かなくなっている』ということだ。

2.坂の上の世界

iPhoneで差別化ができなくなり、今キャリアはTVCMを使ってLTEのエリア整備を競うように訴求している。しかし、顧客は本当にそこを選択肢としているのだろうか?そんな素朴な疑問を持ってしまう。

キャリアの中には、昔の栄光よろしくAndroid、iOSの第三のOSを模索していると伝えられるが、それは顧客にとって、これまでのOS以上にどういった価値を提供できるのだろうか。そんなことは二の次で、そこにはただ相変わらずのキャリア都合があるようにしか思えない。

本当の意味で『顧客ファースト』というスタンスへいつになったら転換できるのか。スマホの次は、いよいよ「キャリア中抜きの時代」となりやしないのだろうか。