NFVの視点を踏まえて、キャリアのネットワーク設備投資、および各ネットワーク機器の市場を予測したMCAの調査レポート「主要キャリアのネットワーク投資戦略と通信インフラ市場2014年度版」から、キャリアの設備投資とインフラ機器市場の動向を2回にわけてお届けする連載企画。1回目はキャリアの設備投資にフォーカスしたが、今回はインフラ機器市場の市場規模と将来動向を取り上げたい。
2014年度以降のインフラ機器市場は、総じて減少傾向になると予想される。2013年度のインフラ機器市場は7,225億円と見込まれ、2014年度には7,000億円を下回ると予想される。
通信インフラ機器市場の推移と予想 |
(出典:MCA調べ) |
レガシー系だけではなく、これまで4,000億円前後と高水準を維持してきたアクセス系機器市場は、2013年度から減少し始めている。さらに、上昇傾向にあったIP関連機器市場も2013年度をピークに減少に転ずると見られている。
2014年度以降のアクセス系機器市場、なかでもその大部分を占める携帯電話基地局(無線機)市場がLTEからLTE-Advancedへの移行の端境期にある。LTE-Advancedの設備投資は2016年度から本格化するが、新設局はスモールセルが主体であり、金額ベースでは2012年度レベルまで回復するのは難しいと予想される。
また、IP関連機器市場の減少傾向は、NFVの影響と見られる。2014年にはネットワークの一部だけをNFV化するような通信キャリアが現れ、2015年には同一の仮想インフラの上に、複数のソリューションが実装されるようになり、2016年にかけて多様なソリューションを統合管理できる環境が整備されていくと予想される。
NFVの目的の一つは、アプライアンスから汎用サーバへの移行によるコスト削減である。そのためハードウェア部分は確実に価格破壊が進む。しかも、仮想環境では、アプリケーションがどのサーバでも展開できるので設備の利用効率も非常に高くなる。ベンダ試算によると既存のネットワークに比べ30~40%のコスト削減が可能だという。
そうなれば、既存の通信機器ベンダは、コモディティ化が進むハードウェア分野で勝負するのではなく、付加価値を生む運用管理機能やオーケストレーション機能の開発、そして全体のインテグレーション分野へと自らのビジネスをシフトしていくと考えられる。
NFV/SDNといった新しいアーキテクチャーがインフラ機器市場に与える影響は、単にハードウェアだけを見れば明らかに市場規模を縮小させる方向に働く。だがNFV/SDN向けのソフトウェア、さらにこれと連携するOSS/BSSといった市場も視野に入れれば、ベンダにとっては新たな市場も見えてくるだろう。
「主要キャリアのネットワーク投資戦略と通信インフラ市場2014年度版~NFVで大きく変貌するキャリアの設備投資動向と通信インフラ機器市場を予測」 【主な内容】 ・NTT、KDDI、ソフトバンクの主要各グループ、電力系通信キャリアのネットワーク設備投資動向 ・局用交換機、伝送装置、IP関連機器(ルータ、スイッチ、サーバ)、アクセス系機器(携帯基地局、ブロードバンド関連機器)市場展望 |