モバイル業界スナップショット:

異業種からの参入相次ぐ中古スマホ市場、背景に黒子の存在

イオンやビックカメラなどの例を出すまでもなく、格安SIMとスマートフォンをセットで販売する動きが活発になっている。手頃感を出すため、セットで販売される端末は型落ち品または新興メーカー品が採用されるケースが多く見られる。

一方、端末価格を抑える別のアプローチとして注目されるのが中古品だ。レンタルDVD大手のゲオでは中古スマートフォンと格安SIMの同時購入による割引キャンペーンを展開するなど、具体的な取り組みも行われている。

今回は、格安SIMの受け皿としても期待がかかる「中古端末」市場の現在までの動きを取りまとめたい。

使わなくなった携帯電話やスマートフォンは、一昔前は「リサイクル」による再資源化が処理の主流だった。2001年4月に電気通信事業者協会と情報通信ネットワーク産業協会が、携帯会社やメーカーの協力を得て「モバイル・リサイクル・ネットワーク」を立ち上げ、全国の店舗で携帯電話・PHS端末本体、電池、充電器を回収する制度を導入。キャリアショップを中心に約1万カ所のネットワークで、ピーク時には年間1,000万台を超える端末本体を回収していた。

モバイル・リサイクル・ネットワークによる回収数の推移
(出典:電気通信事業者協会)

「使用済み端末は買い取ってもらえるもの」との認識が急速に広がったのはここ数年のことだ。浸透しはじめた要因は大きく2つあり、1つは携帯会社自らが機種変更時の下取り施策を進めたこと、もう1つは全国展開するチェーン店が中古携帯電話の買取キャンペーンを大々的に行ったことが挙げられる。

現在では、家電量販店をはじめ、レンタルチェーン、古本チェーン、金券ショップ、貴金属買取店、リサイクルショップ、携帯端末修理店など、異業種からの参入も相次いでいる。

その背景には中古携帯ビジネスを支援する"黒子"の存在がある。

中古携帯を取り扱うにあたっては査定やクリーニング、データ消去など様々な処理を行う必要があり、従来はそれらバックヤード業務のインフラやノウハウを持たないと参入が難しかった。そのため、自前でクリーニングセンターを持つ大規模なリサイクルチェーンや、中古携帯と似た性格の中古パソコンを取り扱っていた事業者が参入の中心だった。

しかし、黒子によって市場整備が急速に進んでいる。データ消去では、情報機器リユース・リサイクル協会が2012年4月からスマートフォンデータ消去ソフトの認定制度を開始、ウルトラエックスとリプロ電子が認定を受けている。

バックヤード業務では、アワーズやリユース、日本テレホンなど、ノウハウの提供または代行を手掛ける支援事業者が登場した。これら黒子によって参入障壁が解消、取扱事業者の急増につながっている。

中古携帯・スマートフォン端末市場規模予測
(出典:MCA「携帯・スマートフォンの中古端末市場動向」)

中古携帯の買取・下取りを行う店舗が全国に約1万3000店規模に広がったことで買取台数・販売台数ともに増加傾向にある。株式会社MCAが行った調査では、2013年度に消費者が購入した中古携帯・スマホの台数は173万台と推定され、2016年度には422万台まで拡大するとみられる。従来はネットオークション経由での購入が大きなウェイトを占めていたが、取扱店舗網の急拡大とサポート体制の強化を背景に今後は店舗での販売が伸びるものと推測される。

本記事は、株式会社Impress Watch「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて6月5日に公開された記事となります。
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