競争の果てに行き着くところまで行ってしまい、関係各所からの指摘もあって今春一旦沈静化した携帯会社各社のキャッシュバック施策。当時、最も手厚いキャッシュバックが行われていたのは、MNPで他社から電話番号そのままに乗り換える利用者に対してだった。MNPが優遇された背景には、携帯契約数が日本の人口を上回り新規開拓できるパイが少ない市場環境に加え、MNPなら自社の回線数を増やすだけでなく他社の回線数を減らすことができる競争上の理由もあった。
そこで今回は、過去2年間に携帯会社を乗り換えた経験者に対し、昨年10~11月に株式会社MCAが行ったアンケート調査をもとに、人はなぜ携帯会社を乗り換えるのか、探っていきたい。
携帯会社を乗り換えた理由 |
(出典:MCA「携帯キャリア『乗り換え』実態調査データ」) |
携帯会社を乗り換えた理由を複数回答でたずねた結果、最も多かったのが「他社に欲しい携帯電話があったから」で、半数近い49.5%が選択している。乗り換え前にNTTドコモを利用していた人に限るとこの割合が6割を超えており、iPhoneの存在の大きさがうかがえる結果となった。
理由の2番目以降は料金に関する項目が並んでおり、「キャッシュバックやプレゼントがもらえたから」を選択したのは28.3%だった。
一方、携帯会社各社が強調する電波状況は乗り換えた理由としてそれほど重視されておらず、「他社の方が電波がつながりやすそうだったから」は16.8%、「他社の方が回線のスピードがはやそうだったから」は12.1%にとどまった。
ここからは、乗り換えた理由で最多だった「端末」に着目してみたい。
乗り換え前後で端末種別がどう変わったか、その推移を見ると、乗り換え前にiPhoneを利用していた人の75.0%は、乗り換え後も引き続きiPhoneを選択していることが分かった。
乗り換え前にAndroidスマートフォンを利用していた人の場合、乗り換え後もAndroidスマートフォンを選んだのは52.8%、iPhoneを選んだ人は43.1%となった。
乗り換え前に従来型携帯電話を利用していた人が乗り換え後に選択した端末はiPhoneが44.1%、Androidスマートフォンが32.4%で、引き続き従来型携帯電話を選択したのは22.3%にとどまっていた。
現時点では3社が横並びでiPhoneを取り扱っており、端末ラインナップでの差はAndroidスマートフォンと従来型携帯電話に限られている状況だ。"欲しい携帯電話が他社にしかない"ケースが少なくなったことで乗り換えが減少していくのか、逆に"今まで使っていた端末と同じものが他社にもある"ことで乗り換えに対する抵抗感が薄れていくのか。今後の動向にも注目していきたい。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて6月19日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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[9/17 14:53 訂正とお詫び]
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