2018年度におけるNFV通信関連インフラ市場規模は880億円まで拡大

NFV(Network Function Virtualization)というワードが昨年来、通信ネットワーク業界で注目を集めている。NFVはこれまでキャリアネットワークを構成していた専用ハードウェア(アプライアンス)を、ハードとソフトに分離し、汎用サーバ上に仮想化したネットワーク機能を実装しようとする新しいコンセプトである。機能ごとに異なる専用アプライアンスの集まりであったネットワークに仮想化技術を用い、サーバやストレージ、スイッチなどの汎用機器と仮想化ソフトで構築するのが目的である。

NFV化はキャリアのネットワーク構造、ベンダ市場に大きな影響

汎用サーバを用いることによるコスト削減や柔軟なネットワーク構成、迅速なサービス立上などが可能になると期待される。

NFVによって通信業界は大きなインパクトを受けるといわれる。キャリアはネットワークインフラの増強に膨大なコストをかけている。専用アプライアンスは高価であり、機器のライフサイクルも短くなってきている。また、新たなネットワークサービスの提供にも時間がかかる。専用機の集合体であるネットワークの保守運用には専門知識を持った人材が必要であり、この点でも収益を圧迫する要因になっている。

NFVはこれらの課題を解決する手段として注目されている。
・汎用ハードを用いることで機器コストが削減できる
・ソフトで機能を実現するため新たなサービスの提供も迅速に行うことができる
・仮想アプライアンスをクラウド化することでネットワークリソースの割り当ても柔軟に実施でき、ネットワーク設定の自動化も実現できる

NFV化はキャリアのネットワーク構造だけでなく、ベンダ市場にも大きな影響を与えるとことになる。NFV化により、通信専用の高価なアプライアンスではなく、汎用のサーバが使われることになり、情報機器系ベンダにも市場は開かれていく。また、ハードとソフトが分離されることによって通信サービス機能を実現するソフトベンダにも市場参入の機会が訪れる。

これまでのキャリア向け通信機器市場は世界的な数社のベンダによって占有されている状況が続いていたが、これらの環境変化によって市場は一気に競争が激化すると予想される。

そこで、NFV通信関連インフラに関する市場動向調査結果をとりまとめた調査レポート「NFVの動向と関連市場における主要プレイヤーの戦略に関する調査 2014」から、主要プレイヤーの動向と市場規模予測について取り上げたい。

統合支配を目指すEricsson、協業展開のNSN

現在、コアネットワーク市場は通信機器ベンダのEPCやIMS、独占的な専用ハードウェアなどで構築されている。そのため数社の通信機器ベンダによって世界的に市場が占有され、高価なATCAサーバや専用ハードが採用される状況にある。

NFVの登場は通信機器ベンダによる専用ハード市場の解放を意味し、通信機器ベンダには失うものが大きいものとみられていた。しかし、通信機器ベンダはNFVの認知度が高まるにつれ、その波に乗るべく、EPCを仮想化する製品やソリューションを発表している。

NFV市場は大まかにコアネットワーク、伝送市場をメインに動きがみられる。コアネットワーク市場ではEPCやサーバ、仮想化(VM)系の3つに区分し、通信機器ベンダ各社の動きをみると、コアネットワークと伝送市場を統合的に支配したいEricssonやHuawei Technologies、NECに、コアネットワーク市場に注力するNSNに分けることができる。

一方、OSS/BSSなどのサーバ系に強みを持つ米HPがEPC系への進出を、伝送市場では米Cisco SystemsがvEPCやvFWなどへの進出を図るのに対し、米Juniper NetworksはNSNとの協業によってシェア拡大を目指す。

図:通信機器市場におけるプレイヤー俯瞰図
2018年度に880億円まで拡大するNFV通信関連インフラ市場

先述のセルラーキャリア4社合計の設備投資額から、NFV通信関連インフラ市場規模として、コアネットワークと情報システム向け投資額を抽出した。コアネットワークにおいて、大きな比率を占めるのがソフトウェア(ライセンス料など)と運用管理・保守費用である。相対的にハード比率は低く、機器よりもインテグレーション費用の占める割合が大きい。

NFVは2015年度に一部導入が想定され、2017年度に本格導入が進み、以降、NFV化率が高まっていくものと推定した。その結果、NFV通信関連インフラ市場規模は2015年度に190億円となり、2018年度には880億円まで拡大する見込みである。NFV化率は既存ネットワーク機器からNFVへの移行度合いを指す。

図:NFV通信関連インフラ市場規模推移と予測
(2013~2018年度)


本記事の詳細は「NFVの動向と関連市場における主要プレイヤーの戦略に関する調査 2014」をあわせてご参照ください。

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