前回は、通信ネットワークのNFV化によって変化する参入プレイヤーの競争構図について取り上げたが、今回はNFV通信関連インフラ市場の成長性にフォーカスしていきたい。
繰り返しになるが、NFV(Network Function Virtualization)とはこれまで特注の高価なハードウェアによって構成されてきた通信キャリアのネットワークを、サーバーやストレージ、スイッチなどの汎用機器と仮想化ソフトで再構築し直すことによって、大幅なコスト削減や柔軟なネットワーク構成、迅速なサービス立ち上がりを実現しようというものである。
NFV通信関連インフラ市場規模推移と予測(2013~2018年度) |
(出典:MCA「NFVの動向と関連市場における主要プレイヤーの戦略に関する調査 2014」) |
NFV通信関連インフラ市場は、サーバーなどの「ハードウェア」、仮想化などの「ソフトウェア」、それらが有機的に繋がり、調和を取りながら運用していく「オーケストレーション」と「運用管理・保守」という4つに大きく分類することができる。
上記グラフは、携帯キャリア4社合計の設備投資額から、NFV通信関連インフラ市場規模として、コアネットワークと情報システム向け投資額を抽出したものである。NFVが導入されるコアネットワークにおいて、大きな比率を占めるのがソフトウェアと運用管理・保守費用である。これまでのコアネットワーク費用と比較して、相対的にハード比率が低く、機器よりもインテグレーション費用の占める割合が大きいというのが特徴となっている。
NFVの導入によって、携帯キャリアの全体の設備投資額が増加するというわけではない。むしろ、ARPUの減少や契約者数の頭打ちが鮮明となるなか、携帯キャリアとしては通信トラフィックの増加を効率的に収容しながらも、設備投資を抑制する必要性に迫られており、その打開策としてNFV導入が計画されているのだ。
携帯キャリア4社向けのNFV通信関連インフラ市場規模では、2015年度に190億円となり、2018年度には880億円まで拡大。設備投資全体に占めるNFV化率は30%まで上昇すると予測している。
NFVが、これからの携帯キャリアの通信ネットワークを支える基幹技術の1つなることは間違いない。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて8月7日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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[9/17 14:48 訂正とお詫び]
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