Analyst Column&Report:

キャリアショップに『格安SIM』が陳列される日

最近のモバイル業界の話題と言えば、格安SIMとMVNOである。

市場活性化を旗印に、以前より総務省が制度面、そして一部MVNOの後ろ盾となる形て推進してきたが、携帯各社は総じてポーズだけにとどまってきた。

そこで、今回半ば強制的にSIMロック解除を押し込んできたのが、総務省による「SIMロック解除に関するガイドライン」である。

新聞や専門誌は言うに及ばす、弊社でもケータイWatchなどのメディアを通じて、SIMロック解除を巡る動きについては伝えてきている

通信料金が半分以下になるかもと言われれば、利用者としては当然ながら興味が湧くわけだが、制度が整備された2015年以降が本格的な競争時代を迎えそうだ。

弊社内でも機会を見つけ、この問題について議論しているが、その関心は、大手3社の寡占状態となっている携帯業界において、MVNOがSIMロックを武器に将来どのくらいのポジションを獲得できるかということにある。

料金が安価ということで注目されてきたが、当然ながら、それだけでは成長鈍化を迎える時がくるだろう。現在のお祭りムードが終息しても市場が拡大するブレイクスルーは何なのか。更なる料金引き下げか、それとも端末か。今後の成長スピードを推し量る上でも大切な論点であると考える。

その点に関して、全く個人的な意見だがという注釈付きで、それは「キャリアショップにMVNOの格安SIMが陳列される」ときではないかと考えている。もちろん、現在の携帯各社とキャリアショップ、そしてMVNOの関係を考えると、単なる妄想かも知れない。

しかし、仮にこれが実現した暁には、MVNO加入者数がブレイクする可能性は高い。

市場の成熟化を背景に、主戦場が新規から既存顧客囲い込みへとシフトしている現状において、携帯会社にとってキャリアショップは、アセット(資産)からコスト(費用)へと変化してきている。キャリアショップを運営する代理店業界の再編が頻繁に行われているのは、何よりも生き残り競争が激化していることの証左でもある。

つまり、携帯会社にとっては、マーケティングコストの削減が、一方、キャリアショップは新たな商材による販売拡大がそれぞれ至上命題となっているのだ。そして、MVNOにとっては、加入者拡大が経営課題となっているが、全国販売網が整備されている上に店員の知識が豊富で、更にはMVNOのアキレス腱であるサポート力にも優れているキャリアショップは、申し分のない販売パートナーであることは間違いない。

問題は、携帯会社がこうしたことを認めるかということである。代理店が運営しているとは言え、ショップの取扱商材などの権限は携帯会社が持っているからだ。これまでのように携帯会社がMVNOに対して敵だと思っていれば難しいだろうが、MVNOとは言え自社顧客を獲得してくれる戦略パートナーだと考えれば、違った意思決定をする可能性もあるのでは。

ちなみに、キャリアショップは大手3社だけで全国に7,500店舗程度あると見られている。

関連ページ