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SIMロック解除に関する論点を総務省ガイドラインから整理する

総務省は10月31日にSIMロック解除に関するガイドラインの改正案を発表した。そこで今回は、改正ガイドラインによってSIMロック解除手続きや今後の携帯市場はどう変化するのかQ&A方式で論点整理を試みたい。

Q. SIMロック解除は「義務化」なのか。

A. 総務省は2010年6月に取りまとめた「SIMロック解除に関するガイドライン」の中で「2011年度以降新たに発売される端末のうち、対応可能なものからSIMロック解除を実施する」ことを打ち出したが、解除を法制的に担保しなかったため、解除可能な端末が一部にとどまった経緯がある。

今回の改正では、SIMロック解除に正当な理由なく応じない場合は電気通信事業法に基づく「業務改善命令発動の要件に該当する」と踏み込んだ表現を用いて法制的な担保を確保しており、実質義務化といえる。

Q. 今使っている端末もSIMロックを解除できるのか。

A. 2015年4月までに発売された端末は今回の改正版ガイドラインの適用外のため、キャリアは強制力の伴わない現行ガイドラインに則った対応をすればよいと考えられる。

現時点でSIMロック解除に対応していない端末が、改正版ガイドラインによって解除できる可能性は少ないだろう。

Q. 携帯回線契約を解約した端末もSIMロック解除できるのか。

A. 改正版ガイドラインでは、利用者に「既に自社の役務契約を解約した利用者も含む」と明記されており、2015年5月以降に発売された端末であれば契約解除後であっても解除は可能となる公算が大きい。

Q. SIMロック解除後の端末のサポートは誰が行うのか。

A. 改正版ガイドラインでは「端末を販売する事業者は、端末製造者等とあらかじめ協議し、SIMロック解除した端末に関する利用者の問合せ窓口等を明確にすること」と記されている。

現在の状況を整理すると、端末修理は「故障修理については、SIMロック解除を実施した場合であっても、ドコモの窓口にてお受付いたします」(NTTドコモ)、「当社にてSIMロック解除の手続きを行った携帯電話機は、当社との回線契約の有無に関わらず修理の受付をいたします」(ソフトバンクモバイル)、など、端末を販売したキャリアが手掛けており、今後も同様の取り扱いが行われるものと考えられる。

しかし、解除後にキャリアを乗り換えた場合のサポートの担い手は今のところ明確ではない。例えば「つながらない」事態が発生した場合、それが端末に起因するものなのか、通信回線に起因するものなのかを判断するのは難しく、端末を販売したキャリアと通信契約をしているキャリアの間でたらい回しにされる恐れがある。

SIMロック解除とは異なるが、MVNOについては、使い方などの問い合わせがMVNO事業者ではなくキャリアに寄せられ、MVNOのサポート現場では既に混乱も起きている。現況は、MVNOのサービス内容等についてはMVNOの窓口へ問い合わせるようNTTドコモがウェブサイト上で告知していることからもうかがえる。同様の事態がSIMロック解除端末のサポートでも発生する可能性は大きいだろう。

Q. SIMロック解除で何が変わるのか。

A. 端末販売価格の上昇を指摘する声が大きく、現行の各種割引施策が縮小される可能性は否定できない。その一方で、iPhoneを除くほぼ全ての端末でSIMロック解除に既に対応しているNTTドコモの端末価格と、他キャリアの端末価格に大きな差がないのも現実で、価格面での影響については不透明である。

価格以外の面では、他社への乗り換えを防ぐべくアメとムチの両面を用いた対策の導入が挙げられる。ただし、いずれも思考実験のレベルであることを前置きさせていただきたい。

まず「アメ」としては、SIMロック解除を希望してきた顧客に対して機種変更での優遇やポイント付与と言ったメリットを提供し、解除を思いとどまらせる措置が考えられる。MNP予約番号の発行時に特典を提案し、MNPを水際で阻止するのと発想は同じである。

また、同一端末でSIMロック解除対応版と非対応版を用意し非対応版のみ安価に設定することも方法論の一つだろう。とはいえ、原則全ての端末でSIMロック解除に応じよという改正ガイドラインに真っ向から反対する手法はさすがに取りにくいのではないだろうか。

一方の「ムチ」は、いわゆる"2年縛り"の契約解除料値上げ、ないし期間の長期化(3年縛りや4年縛りにする)が挙げられる。

さらに踏み込んで、SIMロックを解除して他社に移行させないよう端末を回収してしまうウルトラCも手段のひとつである。というのも、既に一部のキャリアでは、携帯電話とiPadのセット利用で割引を行うキャンペーンにおいて契約解約時にiPadをキャリアに返還することを義務づけ、回収に応じない場合は返還請求を行う条件を設定しているのだ。

周波数帯もキャリアの打ち手のひとつといえるだろう。iPhoneを除けば、各社とも基本的に自社が保有する周波数帯に最適化した端末を発売している。端末メーカーとのパワーバランスの問題によって状況は変わるが、当面はわざわざ他社の周波数帯にも対応させるとは考えにくく、周波数帯をSIMロック解除にかわる囲い込み手段とすることも考え得る。

Q. SIMロック解除が携帯市場に与える影響は。

A. SIMロック解除は昨今のMVNOの隆盛とあわせて、携帯市場に多大なインパクトを与える可能性を秘めている。

確かに、NTTドコモによれば、同社における過去3年間のSIMロック解除件数は20万件程度にとどまっている。ただしこれは、NTTドコモ利用者にとってSIMロック解除のニーズは顕在化しにくい環境にあることに主因があると考えられる。つまり、iPhoneがSIMロック解除に非対応である点、NTTドコモの端末であればNTTドコモ回線を用いたMVNOにSIMロックを解除しなくても乗り換えられる点などである。

しかし、NTTドコモ以外の利用者にとっては、SIMロック解除でMVNOの格安SIMが視野に入るため、ニーズが高まる可能性がある。

当然、SIMロック解除の義務化を見越してMVNO側はさらなる攻勢を掛けてくるだろう。SIMロック解除だけでなく、MVNO側の動向にも目が離せないだろう。

なお、ガイドラインはあくまで改正案であり、総務省では12月1日まで改正案に対する意見を受け付けている

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて11月7日に公開された記事となります。
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