2012年ころからICT業界で頻出するようになったワードの1つにSDN(Software Defined Networking)が挙げられる。当初は話題先行型の市場と見られていたが、データセンターなどのクラウド事業者をはじめ企業などのエンタープライズ系への導入実例が出てきたことでSDNは実態性のある市場へと成長しつつある。
そこで今回は、SDN市場の今後の予測と、携帯キャリアによる採用について探っていきたい。
SDNとは、ネットワーク機器内に統合されていたパケット伝送機能と経路制御機能を分離し、ソフトウェアからネットワーク全体を集中制御しようとするものである。
これまでのネットワークは、例えばネットワークにサーバを追加する、あるいは1つのネットワークを複数に分割するには、物理的にケーブルの接続をやり直したり、ルータやスイッチごとにネットワーク管理者が設定をしたりしなければならなかった。
しかしネットワーク上に仮想サーバが多数存在するようになり、しかもそれが動的に生成、消滅するようになると、ネットワーク管理者がネットワーク機器をそのたびに設定しなければならないのでは実用的な運用を行うことは難しくなってきていた。
SDNが急速に注目されたのは、このような状況を打破するための有力な手段として、ネットワークの構成や機能をソフトウェアだけで設定できるようにすることを目指したコンセプトを提示したからである。
SDNは、おもに設定や運用管理における既存のネットワークの課題を解決し、クラウドやサーバ仮想化などに対応するネットワーク仮想化を実現するものと位置づけられる。SDNの特徴は、ネットワーク機器の動作を外部プログラムから定義できるという点であり、そのメリットは、「柔軟性」と「プログラマブル」であるということに集約される。
図:ターゲット別SDNサービス市場規模推移と予測(2013~2018年度) |
(出典:MCA「SDNの動向と関連市場における主要プレイヤーの戦略に関する調査2015」) |
SDNはデータセンター/クラウド・通信キャリアネットワーク・エンタープライズネットワークの3つの市場が中心となっている。弊社(MCA)では、SDNの市場規模を2014年度は550億円と推定、2018年度には5,000億円規模に拡大するとみている。
中でもデータセンターなどのクラウド事業者への導入が先行し、今は企業ネットワークの分野にも広がってきている。今後は広域ネットワーク対応のSDN製品も充実してくると見られ、通信キャリアへの導入も視野に入ってきている。
通信キャリア向けはまだ実際の事例は少なく、キャリア・ベンダーともコンセプトを検証している段階である。キャリア市場が立ち上がるのは2016年ごろと予測されるが、当初はネットワーク全体への影響を考慮し、限定したサービスなどへの採用に留まるものと思われる。従って今後2~3年は微増傾向が続くものと思われる。ただし一度本格的な通信キャリアへの採用が始まれば、当該市場のポテンシャルは大きく、今後の有望市場に成長することは間違いない。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて1月30日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
- 調査資料:SDNの動向と関連市場における主要プレイヤーの戦略に関する調査2015
- 調査資料:NFVの動向と関連市場における主要プレイヤーの戦略に関する調査 2014
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