NTTドコモがLTE-Advanced採用の新サービスを発表:

「PREMIUM 4G」の狙いは最大速度と実効速度の高速化

2月25日、NTTドコモはLTE-Advancedの記者会見を行った。都内で行われた説明会には同社の取締役常務執行役員 大松澤 清博氏が登壇した。

LTE-Advancedは3月27日から提供が開始される予定で、サービス名は「PREMIUM 4G」。LTE-Advancedのキャリアアグリゲーション技術を用いて、これまで下り最大150Mbpsだった通信速度を開始時点で下り最大225Mbps(上り最大50Mbps)に、2015年度内には下り最大300Mbpsまで高速化する計画。

対応エリアは全国22都道府県38都市の都市部からサービス提供を開始し、2015年度には全国主要都市に展開予定となっている。

東京都内を例に取ると、JR山手線の新宿・渋谷・品川・新橋・東京・神田・秋葉原・池袋・大塚の9つの駅周辺では2015年3月から、上野・有楽町・浜松町・五反田・目黒・新大久保・高田馬場の7駅周辺では2015年6月から、原宿・恵比寿など残りの駅では7月以降に順次展開される計画となっている。

PREMIUM 4Gサービス開始時点で提供される対応端末はモバイルWi-Fiルーター2機種のみで、対応スマートフォンは2015年度早期に発売する予定。

記者会見ならびにその後の囲み取材における、大松澤氏と記者との主なやりとりは以下の通り。

取締役常務執行役員 大松澤 清博氏
「PREMIUM 4G」導入で最大速度と実効速度の両面を高速化
――今回発表されたPREMIUM 4G対応端末はモバイルWi-Fiルーター2機種のみで、スマートフォンは2015年度早期提供予定となっている。なぜこの時期なのか。

下り最大150Mbpsまでは、20MHz幅のシングルバンドで提供できる状況となっていて、既に多くのエリアで提供を開始している。

それを超える速度、ここでの速度は最大速度と実効速度の両面ですが、高速化でより快適なサービスを提供すべく、端末ではカテゴリー6の登場にあわせてネットワークを計画通り進化させてきた。

サービスの開始日を3月27日と決め、体験できる場所の提供とあわせて発表会を開催するに至った。下り最大225Mbpsを印象付ける意味も込めて2月25日にした。

LTE-Advancedはネットワークの能力を上げる効果があるので、備えをすることでトラフィック集中が本当に出てきたときにすぐ対応できるようにしておくことがますます大事だと考えている。今後の対応スマホ発売も見越し、今準備するのがちょうどいいと思っている。

――既にLTEで一定の高速化が図られており、これ以上高速化する必要性はあるのか。

PREMIUM 4Gには、方式上の最高速度を上げる側面と、その能力を活かしてトラフィックが集中する場所でも快適に使えるようキャパシティを広げていく側面があり、高速化だけを追求しているのではない。

最高速度を利用したいというニーズもあり、それはそれで対応していく。また、実効速度をお客さまのニーズにあわせる観点からも、限られた資源を高速化技術という知恵を使ってより効率的に利用していきたい。

――快適さをもう少し具体的に説明いただけないか。最高速度と実効速度はどう違うのか。

自動車を例にすると、渋滞している道路でも一定の速度を維持しながら走れるようにするのが実効速度。空いている道路で出せる速度が最高速度。

実効速度は従来だと1.5~2Mbps程度あればストレスなく使えるレベルだったが、今後はその倍の実効速度が目安になり得るのではないか。トラフィックが集中する場所で使ってもそのレベルの実効速度が出せるようにしていきたい。

方式上の最高速度と体感上の速度である実効速度、その両方をしっかり提供できるようにしていきたい。

――3月のサービス開始に先駆けて法人向け体験イベントを開催するなどPREMIUM 4Gは法人に期待しているように見受けられるが。

最高225Mbpsを提供できるので、より高速な通信を希望される法人に期待している。また、初期の対応端末としてモバイルWi-Fiルーターを提供しているので、パソコン等との親和性の高さもある。実際に使っていただき、新たな使い方を見つけていきたいと考えている。

現行エリアの中にスモールセルをアドオンし複数基地局をまとめて制御
PREMIUM 4Gでは面展開狙わずホットスポットにピンポイント設置
――混雑エリアでの対策とは具体的にどう実現するのか。

混雑するホットスポットに対してアドオンセルというかたちでスモールセルをピンポイントで設置する。

高度化C-RAN技術を用いて、設置したスモールセルをマクロセルと一体的に運用することによって、いままではマクロセルでさばかなければいけなかったトラフィックをスモールセルの方に移すことができる。これはある意味でマクロセルからのオフロードとなる。

――セル内にアドオンセルを設置すると、セル間で干渉しないのか。

LTE-Advancedには干渉をコーディネーションする技術が規格化されており、今回はそれを用いる。

――さらなる高速化として5Gの話にも触れられたが、5Gにむけた技術開発や規格標準化の展望は。

今回のLTE-Advancedとして利用する技術の中に、5Gにつながるものがある。

例えば周波数を束ねて使うキャリアアグリゲーション技術は5G実現にむけて非常に重要。また、電波利用効率を上げるMIMO、アドオンセル導入で用いるセル間の干渉をコーディネートする技術など、5GはLTE-Advancedで定義された技術をさらに進化させていくものと捉えている。

周波数帯を需要に見合うだけの幅で獲得していくことも努力していきたいが、それとは別に今ある周波数帯でキャパシティをあげることも重要な取り組みと思っている。

――PREMIUM 4G対応基地局数の初年度の目標は。

効果があがるようにネットワークを作っていきたい。積極的な計画を立てたいと考えているが、検討の詰めの作業を行っており、本日は回答を差し控えたい。

2015年、ネットワークを思う存分活用し、さらに快適に使って頂けるようにしていきたい。また、対応スマホの発売も控えているので、その時期にはという思いもある。

――PREMIUM 4G開始時点での人口カバー率は。

PREMIUM 4Gはネットワークのカバレッジを広げるものではなく、ポイント的に使っていきたいと考えており、カバーという観点では見ていない。

ただし、どこでお使いいただけるかはしっかりと開示したいと考えており、本日よりウェブサイト上で利用可能エリアを公開する。

(編集部注:「受信時最大速度225Mbpsのサービスエリア」として市区町村名が公開されている)

――PREMIUM 4G導入に際し、既存のネットワークを組み替えるのか。

組み替えることはしない。複数の基地局をまとめて制御する高度化C-RAN技術を活用し、既存基地局の配下にスモールセルをアドオンしていく。

1.7GHz帯ではかなり小セルでエリアを作っているが、それも含め、現行のエリアの中にアドオンでさらに小さなスモールセルを設置し、全体としてのキャパシティを上げていく。そのためのダイナミックな制御を高度化C-RAN技術で行う。

――4Gは最大1Gbpsを目標にされていたと思うが。

キャリアアグリゲーションでは、コンポーネント・キャリアと呼ばれる、最大20MHz幅のLTE用の周波数帯のかたまりをいくつか組み合わせ、合計100MHzまで組み合わせると実用的な速度で1Gbpsが可能となる。

とはいえ、これを実現するには100MHz幅まで寄せ集める必要がある。今後、準備ができれば対応していきたいとは思うが、周波数帯の話もあるので今は未定である。

――PREMIUM 4Gは全国展開するのか。

既にフルLTEで最大150Mbpsに対応しており、フルLTE局を全国展開することがベースにある。そのなかで、トラフィックがさらに集中するところにPREMIUM 4Gを設置していきたい。

全国的にエリア増強は進めていて、ネットワークの能力は高まっているので、全国すみずみまでPREMIUM 4Gが必要なのかというと、フルLTEで十分というところもあると思う。高度化C-RANさえ入れればいつでも導入できるようになるので、様子をみながら必要なところにきちんと展開していきたい。

――LTE-Advancedや5Gに対応した端末は滞りなく出てくるのか。

LTE-Advancedは世界の潮流の主流であることは間違いなく、その意味でLTE-Advancedの技術がしっかり確立すれば、それほど特殊な技術ではないと考えているので、滞りなく出てくるのではないか。

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