「ケータイWatch」にて既報の通り、総務省は1月20日、NTT東西が2月1日から提供を開始する「サービス卸」に関するガイドライン案を発表した。ガイドライン案の内容も踏まえ、サービス卸の中身に関してQ&A方式で取り上げてみたい。
A.従来、NTT東西が利用者に直接提供してきた光アクセスサービス「フレッツ光」を、NTT東西以外の事業者にサービスとして卸す枠組み。卸を受けた事業者(光コラボ事業者)が、独自ブランドで利用者に光アクセスサービスを提供できるようになる。
サービス自体の卸を受けるため、通信設備を持たない事業者であっても利用者に販売ができるようになる。
A.まず挙げられるのが料金面でのメリットだ。2014年10月時点でNTT東西には300社を超える事業者からの問い合わせが寄せられ、実際に100社以上とは秘密保持契約を結んだ上で具体的な検討に入っているという。
検討中の全ての事業者がサービスを提供する訳ではないが、相次ぐ参入によって価格競争が起きる余地が生まれるだろう。今まではフレッツ光の料金自体はどのプロバイダー(ISP)を選んでも基本的に同一(NTT東とNTT西で異なるが、戸建ての場合、各種割引未適用で5500円前後)で、ISPの料金によって総額に差が出る状況だった。今後は、卸値で仕入れた各事業者が、自社の経営判断のもと値付けをすることになる。
また、光回線とその他のサービスを組み合わせたパッケージの登場も期待される。既にNTTドコモとソフトバンクモバイルがそれぞれ「ドコモ光パック」「スマート値引き」と呼ぶ、携帯電話と固定回線のセット割の予約を既に受け付けているほか、格安SIMと固定回線のセット割も各社が続々と発表している。
今までは携帯電話と固定電話で別々に申し込みが必要だったが、パッケージ商品であれば手続きをまとめてできる点もメリットと言えるだろう。
A.乗り換えは可能だ。「転用」手続きと呼ばれる、契約変更のみでフレッツ光から移行できる制度が導入されるからだ。工事も、アクセスサービスのタイプ変更が伴う場合など一部を除き、転用であれば不要だ。
A.転用手続きを使えば、基本的に現在の電話番号を継続できる。
ただし、光コラボ事業者の中にはひかり電話サービスを提供していないところもある。このように、光コラボ事業者が扱わないオプションサービスは、転用前の契約が引き継がれ、NTT東西が継続して提供する。
A.開通工事や故障修理はNTT東西が実施するが、サポートの窓口は基本的にはサービス提供事業者が一元的に提供する。
A.NTT東西がNTTグループにのみ有利な条件を提示し、それ以外の事業者が排除されると危惧する意見がある。NTT東西は「卸サービスの料金・工事費・手続費は、全ての事業者に対し同一で提供する」としているが、卸値は非公開のため公平性が担保されているか外部から検証することはできない。
そのため、総務省が1月20日に発表したガイドライン案では、特定の事業者のみを合理的な理由なく有利に取り扱うことが電気通信事業法上問題であると指摘している。さらに、NTTドコモへのサービス卸を念頭に「移動通信事業者(携帯電話会社)に対する料金等が同一でない場合、その根拠について特に明確かつ合理的な説明が求められる」と釘を刺している。
A.日本全国に張り巡らされた光ファイバーというインフラの利活用を促す起爆剤として、サービス卸への期待は大きい。現時点での話題の中心は格安SIMを含めた携帯電話とのセットプランだが、今後はブランド力や販売力、会員組織を持つ企業による参入も見込まれる。
一方、従来は明確に分離されていたフレッツ光回線とISPが一体的に提供されるため、ISPへの影響が懸念される。「ドコモ光」の場合、ISPを利用者が選べるかたちとなっているが、ドコモ自らもISPサービス「ドコモnet」を提供する。ドコモによる自社サービスへの巻き取りを心配する声も聞かれる。
A.FTTHの契約数に占めるNTT東西のシェアは71.0%(2014年9月末時点、総務省公表値)と圧倒的な地位にある。優位な状況を背景に競合サービスを駆逐するような施策、例えば卸値を原価割れ水準にまで下げるようなことがないよう適切な監督が総務省には求められる。
また、今回のサービス卸はあくまでフレッツ光サービスを1回線単位で卸売するものである。携帯電話会社(MNO)との「接続の太さ」に応じた帯域幅料金を活かしてさまざまなプランが展開される格安SIMのような自由度はない。通信量に制限をかける代わりに格安でサービスを提供する、といった料金体系は現状では出にくいとみられる。
NTT東西も、卸料金についてはまずはスピード重視で設定し、将来的には効率化によって値下げ余地はあるとしており、今後の施策にも注目が集まる。
なお、今回のガイドライン案は2月19日にパブリックコメントの受け付けを終えたばかりの段階となっており、正式なガイドラインは2月下旬以降に公表される見込みとなっている。
※(編集部注)記事初出後の2月27日、総務省より正式なガイドラインが公表されている。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて2月20日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |