NTTドコモが2014年度決算を発表:

加藤社長が語る「SIMロック解除義務化」「格安SIM」「電力とのセット販売」

NTTドコモが4月28日発表した2014年度決算によると、「月々サポート」割引や新料金プランによる影響などで売上高にあたる営業収益は前期比1.7%減の4兆3833億円だった。

2014年度の業績は減収減益、2015年度は増収増益を見込む
パートナーとのコラボレーション「+d」を発表
NTTドコモ 代表取締役社長 加藤薰氏

効率化をはかり設備投資を5.9%減の6618億円にとどめたほか、1200億円のコスト削減を行ったものの、端末機器原価等が増加したこともあり、営業費用は2.8%増の3兆7443億円、営業利益は22.0%減の6390億円だった。携帯端末向けマルチメディア放送を行うmmbiグループ事業等の減損損失が302億円発生したことも響いた。

あわせて発表された2015年度の業績予想によると、営業収益が2.9%の4兆5100億円、営業利益は6.4%増の6800億円を見込んでいる。

なお、同社では、複数台契約が増加していることなどから、事業の状況をあらわす数値としてのARPUのありかたについて検討を行っていることを明らかにし、2015年度第1四半期より新方式での公表を行う可能性を示唆した。

2014年度実績
2015年度業績予想
2014年度オペレーション数値


また、中期目標に向けた新たな取り組みとして、NTTドコモが持つプラットフォーム(顧客DB、決済、ポイント、プッシュ通知機能など)を活用しパートナー企業とコラボレーションし新たな価値を提供する「+d(プラスディー)」の展開も進めていくという。

中期目標に向けた取り組み
「+d」の展開


都内で行われた決算発表会には、代表取締役社長 加藤薰氏、取締役常務執行役員 財務部長 佐藤啓孝氏、取締役常務執行役員 経営企画部長 阿佐美弘恭氏が出席し、説明が行われた。

記者との主なやりとりは以下の通り。

業績・業績予想に関する質疑応答
――2015年度の業績予想で営業利益が増加する要因は。
加藤氏:
コスト効率化で営業費用を2100億円削減するほか、スマートライフ領域で500億円、モバイル通信サービス収入で700億円(音声で600億円、パケットで100億円)の収益増を計画している。

一方、月々サポートで1100億円、端末機器販売収支で300億円、トラフィック増に伴うコストで1000億円など、年間で2900億円の営業費用増を見込んでいる。

2015年度予想 営業利益の増減要因
――2015年度にコスト削減を積み増す計画だが、既に2014年度にも削減を行っており、さらに削減するのは難しいのではないか。
加藤氏:
コスト削減の積み増しはは2014年度上半期決算で業績予想の下方修正をした際に発表したが、その時点から中期的にみていた。

同じメニューで少し時間がかかるもの、タイミングが必要なものもあり、そういうものの成果が今期出てくると考えている。

コスト効率化(実績)
コスト効率化(2015年度予想)
――2014年度第4四半期の営業利益が急減した理由は。
佐藤氏:
新料金プランの影響、端末の原価増加等、mmbiの減損(302億円)が挙げられる。
――今期の目標は。
加藤氏:
2015年度は「確かな一歩を踏み出す」年。結果にこだわる年でもあり、営業利益目標の6800億円はコミットの数値と捉えている。中間決算では明るい報告ができるように事業運営をしていきたい。
――2014年度の純増数は349万だったが、2015年度の予想では330万で減少を見込んでいる。その理由は。
加藤氏:
2014年度は大口のスマートメーター案件など特殊要因もあったが、それがなくなるため減少とした。
2015年度オペレーション指標(予想)
「+d」に関する質疑応答
――「+d」を中期目標に掲げたが、ポイントプログラムも今後は自社内完結ではなくオープンにしていくのか。
加藤氏:
今まではドコモの中で貯めて使うかたちだったが、そこから一歩踏み出そうとしている。使えるところ、貯めるところを増やしていきたい。オープン性を持ちながら利用者に提供していきたい。
送客、基盤、決済のドコモの強みを活かし、パートナーと組んで新しい価値を届ける取り組みを進めるという。ブランド統一は「dマーケット」と同様に「d」と「サービスが直感的にわかる単語」の組み合わせとし、様々な場面で「d」を目にしてもらうことが狙いとのこと。
――保険分野に対する今後の取り組みは。
加藤氏:
我々は「ケータイ補償お届けサービス」を最初に手掛けており、これも一種の保険である。今後はビッグデータ活用などで便利かつお得に提供できると思うので検討している。ただし、餅は餅屋ではないが、パートナーと連携して提供していくのが良いと考えている。
――電力とのセット販売については。
加藤氏:
中期目標で掲げた「+d」の枠組みのなかで、電力も検討している。ただし、セット割のようなものだけでは意味がないという意見があるのも承知している。具体的には公表できない。
SIMロック解除義務化、MVNOに関する質疑応答
――来期の予想値にSIMロック解除義務化、格安スマホの拡大の影響は織り込んでいるのか。
加藤氏:
織り込んでいない。というのも、SIMロック解除は従前より総務省のガイドラインに従い対応しており、年間11~12万ぐらい解除している。

(まったくゼロからはじめる訳ではないので)この水準に新たに追加されるかどうかは注視していきたい。MVNOも同様で(現在の推移からの変化を)注意深く見守っていきたい。

――SIMロック解除が義務化されたことをどう捉えているか。また、義務化で利用者の使い方にどう変化が出るのか。
加藤氏:
解除ニーズで最も多いのは、海外旅行に出かける際、一定期間滞在する場合に現地オペレーターのSIMをさしての利用とみている。そういうニーズに対しては今まで通り取り組み、推進していきたい。

ただし、一部では不正に入手して他社に転売する行為などが散見されているのも事実。解除が義務づけられたことで、悪意のある行為をある程度防止したいという観点から、今後は6ヶ月以内の解除は制限することとした。

弊社の端末は解除をしなくても(NTTドコモ網を使った)MVNOで使えるので、どういう変化がおきるのか、解除数が増えるのか、含めてみていきたい。

――6ヶ月間はSIMロック解除ができないが、これでは買ってすぐ海外に渡航する利用者にとって不便ではないか。
加藤氏:
期間は今後検討していきたい。
阿佐美氏:
加藤が「検討する」という発言をしたのは、様子をみたいということだと理解している。

一部の悪意を持った利用者のせいで、他の大多数の顧客が困るのは問題だと思うが、一方で不正対策も必要である。我々は社内で検討を重ね、その結論として6ヶ月間の解除不可期間を定めた。不正対策を行う上で、6ヶ月という期間は、様々なシミュレーションの中で一番適切な期間として結論をだした。

当面はそういう仕様で展開していく。今後、お客さまからの声も挙がると思うので、それも含めて検討していきたい。

――NTTドコモとして、格安SIMに取り組む意向はあるか。
加藤氏:
NTTグループ全体として考えた場合、グループ内でMVNO事業を展開している会社も既にあるので、そのあたりもトータルにみながら検討を行っている。
その他の質疑応答
――ドコモ光の3月末時点の申込数は23万件とのことだが、実際開通しているのはどのぐらいか。
加藤氏:
3月末時点では、開通しているのは半分弱。ただし最近は半分をやや超えるまでになっている。

弊社、NTT東西、ISPの連携の部分で足りていないところがあり、お待たせしていて申し訳ない。また、データの持ち方でアンマッチがあり、手続きが進まないこともある。

ドコモ光の契約数は2014年度(3月末)時点で23万件。2015年度に180万契約まで拡大すると見込む。
――一部でフィーチャーフォン製造中止との報道が出たが。
加藤氏:
フィーチャーフォンの定義は難しいが、お客さまからみたフィーチャーフォンはずっと提供していく。OSはSymbianやLinuxを使っているが、それに対応する部品供給がなくなるため、従来のような端末の供給は難しい。

ただし、操作性やサービスは維持し、テンキー操作できる端末は今後も作っていきたい。

我々は投資家向けのIRを行っているが、そこでは毎回、今後も出して欲しいとの要望が寄せられている。

iモードについては、スマホの場合SPモードを提供しており、今後はiモードと同じ操作性になるようにしていきたい。iモードは、対応端末が徐々に減って行くのに従い、利用者数も減っていく。

[4/30 18:35] 説明資料の追加、および一部内容を加筆しました。

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