そこで今回は、北米と並んでスマホゲームの進出先として選ばれている韓国・中国の市場について、両国でのサービス運営を通じて現地事情に明るい株式会社ネクシジョン 代表取締役の黄 孝善(ファン ヒョウソン)氏、執行役員・マーケティングマネージャー 米村 貴志氏にお話を伺った。
株式会社ネクシジョン 代表取締役 黄氏(写真右) /執行役員・マーケティングマネージャー 米村氏 |
――日本で人気を博したスマホゲームの海外進出が相次いでいるようですね。
黄氏:
そうですね。一例を挙げれば、ミクシィ「モンスターストライク」は昨年5月の台湾を皮切りに、10月に北米、11月に韓国、そして12月には中国でのサービスを開始しています。また、コロプラ「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」は英語版、韓国語版、中国語(簡体字)版など複数言語に対応しています。
――北米と並んで韓国や中国へ進出する動きが目立ちますが、日本市場とはどのような違いがあるのでしょうか。
日本では、アプリのダウンロードはiOSなら「AppStore」、Android OSなら「Google Play」が一般的ですが、韓国も中国も日本ほど公式マーケットの存在感がありません。公式マーケットに代わりアプリのダウンロード先のメインストリームになっているのが、サードパーティーによるプラットフォーム(マーケット)です。
韓国ではメッセージアプリ「KAKAO」のプラットフォームでスマホゲームをダウンロードするのが一般的です。
――なぜ、公式マーケットではなく韓国KAKAOが好まれるのでしょうか。
ベースには韓国国内での普及率が90%以上ともいわれる圧倒的なシェアの力があります。加えて、ゲームにおけるコミュニケーション機能も強さの源泉となっています。友達などとコンタクトをとりながら進めていくタイプのゲームでは、その輪に入るためには同じプラットフォームからゲームアプリをダウンロードする必要があります。国内で最も多くの利用者を抱える韓国KAKAOには、ネットワーク外部性効果が働いています。
――さきほど、中国も公式マーケットよりプラットフォームの方が利用されているとお話されていましたが。
そもそも、中国ではGoogleが締め出されているためGoogle Playが提供されていません。AppStoreは提供されていますが、iOSを脱獄して使う人も少なくないため、事実上プラットフォームからでもアプリがダウンロードできる状況にあります。そのため、通信キャリアをはじめ、SNS、ネット通販、検索サイトなど一定の利用者を抱える事業者が多数参入しています。
一説には中国国内に300ものプラットフォームがあるとも言われており、スマホユーザーは好きなプラットフォームからアプリをダウンロードしています。中国市場ではテンセントが提供するメッセージアプリ「微信(WeChat)」が代表的なプラットフォームですが、韓国KAKAOのようにゲームアプリにおける一強の地位を築くまでには至っていません。
――メッセージアプリによるゲーム配信といえば、日本で「LINE」が「LINE GAME」を提供しているのをイメージすれば分かりやすいですね。
確かに、メッセージアプリ内でゲームが提供されている、という点では共通です。ただし、LINEはプラットフォーマーではなくパブリッシャーに位置付けられます。――プラットフォーマーとパブリッシャー、両者はどう違うのですか。
プラットフォーマーはアプリをダウンロードするマーケットの運営と集客が主な役割です。その立ち位置は公式マーケットと似ており、基本的には一定の審査基準をクリアすればそのプラットフォーム内でアプリの配信ができるようになります。
一方、パブリッシャーは自らがゲームの選定や運営を行います。LINE GAMEで展開されている「ポコパン」は韓国のTREENODE社が開発したゲームですが、"LINEのゲーム"として提供されています。
――アプリをダウンロードする場を作るだけなのか、自らが主体的にゲーム提供にまで踏み込むのか、の違いですね。
そうなります。ですので、プラットフォーマーは「場所代」として、アプリの売上の一部を手数料として徴収します。一方パブリッシャーは、ゲームタイトルの権利を得るための契約金や開発コストを負担する代わり、収益は総取りないしゲーム開発企業とのレベニューシェアとなります。とはいえ、両者は明確に線引きされているわけではありません。プラットフォーマーの中国WeChatも、パブリッシャーとして自らゲーム運営を手掛けています。あくまで、どちらに比重があるか、という観点からの分類となります。
――違いはあるにせよ、日中韓の3カ国ともメッセージアプリがキープレーヤーの一角を占めていますね。
メッセージアプリは毎日のように一定のユーザーが利用する、いわばネット上の「一等地」という存在ですから、キープレーヤーになるのも必然と言えます。(後編に続く)
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて3月20日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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