近年、携帯電話基地局および部材市場は海外ベンダーによる勢いが増している。特に無線機市場では、ノキアやエリクソン、サムスン電子など海外ベンダーによるマルチキャリア化が進む。これらのベンダーは従来からマルチキャリア化を展開していたが、近年は加速している印象を受ける。
そこで今回は、主要無線機ベンダーの基地局供給状況を整理してみたい。
ノキアはKDDI(au)とソフトバンクモバイルで着実にシェアを獲得し、NTTドコモへはパナソニック システムネットワークス(PSN)を介し、無線機を供給していた。その後、PSNのキャリア向け無線ネットワーク事業の統合により、現在はNTTドコモへもノキア名義で無線機を供給し、よりシェアを高めている。
エリクソンはソフトバンクモバイルとワイモバイルでシェアを獲得し、最近ではKDDI(au)とUQコミュニケーションズに本格参入した。KDDI(au)での大幅なシェア拡大は進んでいないが、UQコミュニケーションズでは既存ベンダーのサムスン電子を凌ぐ勢いで無線機供給が進められている。
サムスン電子はKDDI(au)でのピコセル供給が聞かれるが、700MHz帯での供給次第で、KDDI(au)内シェアでの位置付けが高まる可能性がある。また、UQコミュニケーションズへも無線機供給を行っており、KDDI(au)向けに次ぐ規模に拡大している。
華為技術(ファーウェイ)は現在、ワイモバイルとWireless City Planningへの供給にとどまっているが、2.5G/3.5GHz帯とのCAを踏まえると、今後、国内市場でのカギとなるベンダーの1社といえる。2015年4月にはソフトバンクモバイルやワイモバイル、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクBBが1社化される。ソフトバンクモバイル向け大手のノキアとエリクソンに割り込む形となり、熾烈な争いが繰り広げられる見込みである。
一方、国内ベンダーはPSNが撤退した中、NECと富士通などが存在し、両社はNTTドコモへの供給にとどまっている。NTTドコモによる浮き沈みの少ない基地局計画はベンダーにとって、事業を展開する上で、心強くもあるが、拡大を目指すには国内展開のみでは厳しい面もある。
そのため両社は国内展開よりも、近年は海外展開を積極化している印象を受ける。NECは「PASOLINK」などの伝送路系、SDN/NFVソリューションといったコアネットワーク系の展開などを積極化させている。富士通は英Vodafone Groupや独Kathreinなどと共同で、基地局向け国際標準規格であるOpen Radio Equipment Interface(ORI)に準拠した装置によるLTE実証実験の成功を発表した。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて4月3日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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