安倍首相の鶴の一声で引き下げも含めた方策の検討が始まった携帯電話の利用料金。なぜ今、携帯電話料金にフォーカスが当たったのだろうか。
安倍首相が「携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題である。高市総務大臣には、その方策等についてしっかり検討を進めてもらいたい」と指示を出したのは、9月11日に行われた第15回経済財政諮問会議の席上だ。
実は、同会議に提出された「経済の好循環の拡大・深化に向けたアジェンダ」の中には「家計支出に占める割合が高まっている情報通信の競争環境の整備」が施策の1つとして盛り込まれていたのだ。
つまり、首相の発言は唐突に行われたわけではなく、アジェンダを受けて指示が行われたと考えるのが自然だろう。
では、家計は携帯電話の利用料をどの程度支出しているのだろうか。
通信料金と主な公共料金の過去10年間の年間支出額の推移を見るべく、2005年の支出額を100とした場合の動向を総務省「家計調査」のデータから取りまとめたのが下のグラフだ。
携帯電話の利用料を示す「移動電話通信料」はこの10年で28.9%増加していることが分かった。実際の支出額は、2005年の6万6909円から2014年には8万6239円へ、約2万円増えている。
グラフをみると、移動電話通信料よりもインターネット接続料が急増していることが分かる。10年で61.0%もの増加を記録している。とはいえ、これは固定通信の中身が固定電話からインターネットへとシフトした影響として説明できる。同期間で固定電話通信料は29.9%減少しており、インターネット接続料と固定電話通信料を合算した金額の推移をみると、7.0%の減少となっている。
公共料金の動きはどうだろうか。ガス代や上下水道料はこの10年でほとんど支出額の増減はない。電気代は東日本大震災後の電力供給事情が影響する2012年以降急増しているが、それ以前はガス・水道と同様に安定的に推移していたことがグラフから読み取れる。
総務省が7月に発表した「電気通信サービスに係る内外価格差調査」では、海外と比較し極端に高額ではないとされた携帯電話料金。とはいえ、この10年間、ほぼ右肩上がりで家計の支出額が上昇しているのもまた事実である。
首相の指示を受け、高市総務大臣は年内を目途に結論を得るよう省内に指示を出しているという。記者会見では「例えば、1GBという選択肢があってもいいし、もう少し細かい料金設定ができる多段階化など、様々なアイデアをいただきたい」とも述べている(会見の模様)。今後の議論の行方にも関心が集まりそうだ。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて9月25日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |