コア/メトロネットワークといったキャリアのバックボーンネットワークを構成する通信機器である伝送装置。当該市場はWDM、SONET、SDHといった機器により構成されている。トラフィックの急増にともないバックボーンネットワークも増強がはかられていると考えられるが、市場はどのように推移しているのだろうか。連載の5回目は、伝送装置市場について取り上げたい。
本記事の詳細は「主要キャリアのネットワーク投資戦略と通信インフラ市場2015年度版」をあわせてご参照ください。 |
固定系キャリアはモバイルトラフィックの急増を受けて、2012年から2013年にかけてWDMの通信スピードを40Gbpsから100Gbpsへ増強した。一方、モバイルキャリアは急増するトラフィックに対応するため、中長期的な計画の下、ネットワーク増強を目的にバックボーンネットワークに100Gbpsの伝送装置を導入している。
しかし、モバイルキャリアはキャリア間の競争激化やARPUの低下など厳しい市場環境変化に対応する中、収益を見込みながらの抑制的な投資戦略を展開している。
伝送装置の技術開発は増大するデータトラフィックを処理するための大容量化と、キャリアの効率的なネットワーク構築と、その運用を実現する観点で進められている。
基幹系においては、すでに100Gbpsの装置が導入されているが、増大するトラフィックに対応するため、今後はメトロ系ネットワークにも100Gbpsの装置の導入が進んでいく。さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、モバイル利活用の拡大、4K/8K映像の普及、スマートTVなどインターネット回線を利用した新たな映像サービスの登場などにより、バックボーン回線における400Gbps、1Tbpsの伝送に向けた技術開発が進められていくものと思われる。
当該製品はキャリア向け製品であり、キャリアの設備投資動向に大きく左右される市場である。2011年度から2013年度までは主にモバイルトラフィックの急増に対応するため、バックボーンネットワークが増強され、伝送装置への投資も活発化していた。2014年度はモバイルキャリア投資が抑制になる中、ほぼ横ばいであったが、2015年度からはさらなる投資抑制の影響を受け、減少に転じると予測される。
ただ、今後もモバイルトラフィックが増加することは避けられない状況の中、キャリアのコア/メトロネットワークへの投資は継続するものと思われ、減少傾向は変わらないものの、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた高精彩映像配信設備、ビッグデータサービス対応通信回線設備の需要などが見込まれるため、市場は微減傾向で収まるものと予測される。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて10月30日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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