総務省主催の有識者会議「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」。15年12月16日に行われた第5回会合では、過去の議論を踏まえた「取りまとめ案」が提示され、最終的に案が了承された。
「利用者のニーズや利用実態を踏まえた料金体系」「端末価格からサービス・料金を中心とした競争への転換」とともに検討課題とされた「MVNOサービスの低廉化・多様化を通じた競争促進」の中では、接続料の適正性・透明性向上、MVNOへのデータベース開放と並んで「中古端末市場の発展」が方向性の1つとして掲げられた。
格安SIMと中古端末の組み合わせは、安さを求める利用者にとって魅力的な選択肢といえる。弊社が行った調査では、中古端末購入者の約1割が、中古端末購入時に格安SIMを同時に(かつ同一店舗で)購入していることが明らかになっている。
直近に導入された制度も中古端末市場拡大を後押ししている。中古端末市場では、多くのMVNOが回線を借りるNTTドコモの端末が人気を集める傾向にあったが「SIMロック解除の義務化」で長期的には需要の均一化が期待される。また「携帯端末修理事業者の登録制度」で、壊れた端末であっても修理して販売可能となるため、流通量の増加に寄与するものと考えられる。
その一方、今回のとりまとめ案で打ち出された「行き過ぎた端末購入補助の是正」は、中古端末市場へネガティブな影響を与える可能性がある。
割引の縮小による実質的な端末価格の上昇が端末買い替えサイクルの長期化につながり、機種変更で使わなくなった端末が中古市場に供給されにくくなることが考えられる。逆に、キャリアがミドルレンジ端末のラインナップを強化すれば、中古端末との価格差が縮小して需要が弱含むおそれもある。
また、キャッシュバックに対する規制の抜け道として、キャリアによる「下取り」が重用されることも想定される。中古端末市場の実勢を大きく上回る下取り金額を設定すれば、利用者にとってはキャッシュバックに近いメリットが受けられる一方、中古端末市場への端末供給減少を引き起こすからだ。
タスクフォースのとりまとめ案了承で議論は一区切りを迎えた感があるが、具体化はまだこれからである。施策としてどのように落とし込まれていくのか、今後も注目していきたい。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて2015年12月18日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |