通話強化に踏み切るMVNO「FREETEL」にインタビュー:

2つの顔を持つFREETELが「電話かけ放題アプリ」を導入した狙い

データ通信だけでなく音声通話の強化に踏み切ったMVNOの取り組みについて取り上げていく不定期連載。

2回目となる今回は、「FREETEL」音声SIM契約者向けに国内通話の1分間・5分間かけ放題アプリ「FREETELでんわ」を今年3月から開始した、プラスワン・マーケティング株式会社 取締役の大仲泰弘氏、ならびにビジネスディベロップメントグループ ジェネラルマネージャーの土井泰二氏にお話を伺った。

「スマートフォンとSIMをセットで購入する」日本の実情にあわせ、
スマートフォンもSIMも自ら提供
――音声通話の取り組みについてお伺いする前に、まずは御社の事業全体についてお聞かせください。スマートフォンも自社で開発するMVNOという立ち位置は非常にユニークです。
プラスワン・マーケティング株式会社 取締役 大仲 泰弘氏
大仲氏:
我々が自らスマートフォンを手掛けている背景にはいくつかの理由が挙げられます。

まず、携帯電話が世の中に出てから今まで、日本ではスマートフォンとSIMはセットで販売されてきました。スマートフォンとSIMを別々に買ってくださいとお願いしても、セットが当たり前の世界を切り崩すのは難しいですし、スマートフォンとSIMの両方とも我々が提供した方がお客様にとってメリットがあるのではないかと考えました。

また、創業メンバーである増田(代表取締役 増田薫氏)と私がもともと外資系メーカーで携帯スマートフォン事業に携わっていたことも大きいですね。当時は携帯キャリアにスマートフォンを提案し、採用された製品を納入していましたが、海外を見渡せばSIMフリースマートフォンが当たり前のように普及していました。スマートフォン事業を手掛ける中で「日本と世界との差」を目の当たりにするとともに、国内でも海外同様SIMフリースマートフォンが受け入れられるのではないかと将来性を感じていました。

――御社の通信料金体系は、実際に使用したデータ量に応じた段階制になっています。「3GBで900円」など事前に決めたデータ量による定額制を採用するMVNOが多い中で、この方式を選ばれた理由は何ですか。
大仲氏:
やはりお客さまからの声が大きいですね。携帯を契約する際、「何ギガのプランにしますか?」と聞かれますが、答えられる人は少ないと思います。であれば「定額で月間何ギガ使える」方式ではなく、多段階にして使用した分だけ料金をいただく方がよいのではないかと考えました。

詳細はお答えできませんが、実際の傾向として、お客様によってデータ量の使い方はまちまちです。最低ラインの100MB以下の方もいれば、上限の10GBに達する方もいらっしゃいます。

また、そもそも電気やガスなどの公共料金は使用量に応じた請求となるのが一般的ですよね。通信でも定額制より多段階制の方が利用者の実感に合うのではないかと思います。

――3月から「LINE」など特定SNSアプリのデータ通信料を課金対象外にされましたが、これも顧客ニーズが大きかったのでしょうか。

特定のデータ通信を課金対象外とするサービスは、昨年10月に発売したiPhone/iPad専用SIM「FREETEL SIM for iPhone/iPad」が最初でした。

この商品では「App Store」からのアプリダウンロードを課金対象外としたのですが、開始するとお客様より「あれも無料に」「これも無料に」と、多くのご要望をいただきました。その中から、「メッセンジャーアプリデータ通信量0円サービス」の提供に踏み切りました。メッセージのやりとりは通信の基本ニーズですし、FREETELだからこそ提供できる価値をお届けしたいという思いもありました。

SNSアプリのデータ通信料非課金化は、実は昨年12月に発売した訪日外国人向けプリペイドSIM「FREETEL Prepaid Data SIM for Japan」で先行させており、それをポストペイドの「FREETEL SIM」にも拡大させた形です。

弊社は、NTTドコモ網と直接L2接続を開始したのが昨年7月と後発でした。その分最新の設備を導入しており、このような柔軟なプラン設計にも対応できます。

なお、非課金化は標準サービスとして弊社SIM利用者に一律導入しましたが、お客様の中には通信の識別を希望されない方もいらっしゃるため、個別に対応いただけるよう準備も行っています。

――御社では、顧客からの問い合わせ窓口であるコールセンターを自社で運営されているそうですね。
大仲氏:
我々は、カスタマーサポートセンターをアウトソーシングせず自社で持つことをポリシーとしています。

サポートはコストと捉えられがちですが、顧客にいちばん近い存在でもあります。それを外注してしまうと、回答をマニュアル化せざるを得ないですし、サービス改善のヒントも得にくくなってしまいます。サポート部隊は営業の最前線と位置付けています。

「FREETELでんわ」導入の狙い
――次に、音声通話についてお伺いします。かけ放題アプリ「FREETELでんわ」を導入した狙いはどこにあるのでしょうか。
土井氏:
通信キャリアが通話かけ放題とパケット定額のセットを基本プランに据える中で、我々も同様の通話定額プランを提供することで、通信キャリアからの移行障壁を取り除く狙いがあります。

専用アプリから発信する際にプレフィックス回線を自動選択させ、中継電話の仕組みを活用することで原価を安く抑えて定額プランを実現させました。

――「FREETELでんわ」は、かけ放題の対象となる時間で1分と5分の2つのプランがありますね。
土井氏:
検討をはじめた2015年冬の段階では5分プランが念頭にありました。その後、ちょっとした連絡程度の通話が中心の方向けであれば1分未満の通話ニーズも結構あるのではないかと考え、最終的に二本立てとしました。

かけ放題プランだけでなく、月額基本料無料で国内通話料が30秒10円と通常の半額になるプランも提供しています。これは、以前より提供してきた「通話料いきなり半額」と同様です。

なお、「通話料いきなり半額」は弊社SIMをご利用でない方でも導入いただけます。一方「FREETELでんわ」は提供先を弊社の音声SIM利用者のみに限定するかわりに、半額だけでなくかけ放題プランも選択できるようにしています。

――サービスを開始されてから、顧客層に変化はありますか。
土井氏:
3月25日に提供を開始したばかりですので、まだ何とも申し上げにくいのですが、我々としては変化に期待しています。

当初、MVNOは2台目や3台目需要が中心でした。しかし、1台目の携帯としてMVNOを考えている方を取り込むフェーズに移行しつつある中で、メインとして選んでいただくための起爆剤になって欲しいと期待しています。

――「FREETELでんわ」は、利用登録の際に専用パッケージを購入するスタイルとなっていますが。
土井氏:
量販店などでスマートフォンやSIMを購入される方が多くいらっしゃいますので、店頭にパッケージを展示しサービスをアピールできればと考えています。逆にパッケージを目にされた方に、こういったサービスがあるのがFREETELだと認識していただき、スマートフォンやSIMの購入に結びつければとも思っています。
スマートフォン・通信インフラともに、他社への提供にも取り組む
――「FREETELでんわ」に限らず、御社では量販店での販売に積極的ですね。
大仲氏:
携帯電話を購入する場所といえば、キャリアショップ、併売店、家電量販店が中心でした。以前より増えているとはいえ、オンラインショップで買う人はまだまだ少数派でしょう。

我々はさすがにキャリアショップに商品を並べてもらう訳にはいかないですが、お客様に今までと同じようにご購入頂けるよう、家電量販店様には数多く取り扱っていただいております。FREETELのコーナーを展開頂いているお店も続々増えています。

――MVNOの中には、御社のSIMフリースマートフォンを取り扱う事業者も見受けられます。ある種競合関係にあると思いますが、いかがでしょうか。
大仲氏:
我々は、スマホメーカーとしてのFREETELと、MVNOとしてのFREETELを全く別に考えています。

メーカーとしては、「SIMフリー」のスマートフォンをご提供しているわけですから、それこそ自由に、より多くの方にご利用いただければと考えております。

おっしゃるとおり、MVNOとしては競合する部分もあるかもしれません。ただ、まだまだMVNOは市場を広げていく時期だと思っていますので「協業しながら市場を広げていきましょう」とお話させていただいています。

他社への供給はスマートフォンだけではありません。我々はNTTドコモとL2接続を行っており、そのインフラをMVNOに提供するMVNE事業にも取り組んでいます。

――ありがとうございました。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて5月27日に公開された記事となります。
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