Nokiaが2016年8月25日に開催した、IoT事業に関する記者説明会。その模様を過去2回にわたりお伝えしてきたが、3回目となる本稿が特集の最後となる。今回は、説明会で紹介された同社の海外IoTの事例を取り上げたい。
説明会で登壇したNokia日本法人 テクノロジー統括部長の柳橋達也氏が講演で披露した導入事例は「Verizon Telematics」「AT&T Digital Life」「Connected Bus Shelter」の3つである。
「Verizon Telematics」はコネクテッドカーと呼ばれるもので、VerizonやMercedes-Benzと協業している。
Mercedes-BenzのITシステムに自動車から収集・分析したデータを提供することにより、車両の診断、ドライバーや同乗者への情報提供、無線通信での車内のソフトウェア更新などが可能になる。
ディーラーが「Verizon Telematics」を導入することにより、車両診断や修理・メンテナンスを行う際、事前に必要な情報を収集し、ドライバーの振る舞いを把握できる。また、ドライバーごとに運転方法が異なることも想定され、ドライバーの運転状況や運転技術に見合った形での保険料設定も可能になる。
コネクテッドホームの「AT&T Digital Life」はAT&Tとの協業になる。
月額30ドルからのホームセキュリティサービスで、家庭内に設置された各種センサや防犯カメラ、無線制御装置を「IMPACT」で管理・制御する。AT&Tにとって、「AT&T Digital Life」はARPUの向上につながり、さらに既存サービスとの併用による解約防止も期待できる。
なお、AT&Tが「IMPACT」を採用した要因として、さまざまな種類のデバイスに対応していたことが挙げられた。「IMPACT」は15億超の機器を管理、80,000超のデバイス型を認識、15,000超のデバイス型を自動設定し、大規模にIoTを展開している。
「Connected Bus Shelter」はコネクテッドシティに位置付けられ、Chorusと協業する。バスの待合所にブロードバンド回線を引き込み、待合所のタッチパネル式ディスプレイで運行情報やローカルニュース、広告、ルート検索を行うことができる。現在、商用化はされていないが、ニュージーランドでトライアルが実施されている。
Nokiaは待合所のIoTハブ化として、「Connected Bus Shelter」の展開を図りたい考えがある。「Connected Bus Shelter」に引き込まれたブロードバンド回線をバックホールに利用し、モバイルキャリアにスモールセルの設置を促す。あるいは、待合所のオーナーが利用客に対し、最適な広告を配信し、広告収益を得ることも考えられる。
それに伴い、Chorus自体も待合所のオーナーやモバイルキャリアから接続料や設置料などの徴収も見込める。さらに待合所にIoTデバイスやセンサを設置することにより、バス運行会社などに交通渋滞情報のデータを再販するなどのビジネスも想定される。「Connected Bus Shelter」は関係各社にメリットをもたらすものとなる。
これまでNokiaといえば、LTE市場での大手海外ベンダという位置付けであった。しかし、仏Alcatel-Lucentの買収により、固定ブロードバンドやIPルーティング市場でもグローバル3強に入るなど事業が強化されている。今回、「IMPACT」の発表を受け、通信機器の供給からビッグデータ解析の提供まで、事業分野の裾野を広げ、事業規模のさらなる拡大を目指す。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて9月16日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
- Nokiaが考える「IoT成功のポイント」とは
- 5つの要素を想定したNokiaのIoTプラットフォーム「IMPACT」
- Nokiaが説明会で取り上げた、IoT「3つの海外導入事例」
- 参考資料:携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測 2016年版