2016年2月、ソフトバンクはエリクソンのvMME(virtual Mobility Management Entity)とクラウドプラットフォームを導入した。続く3月にはNTTドコモが商用ネットワークでのネットワーク仮想化技術の運用を開始している。各社が本腰を入れて取り組み始めた「ネットワーク仮想化」の現状を整理していきたい。
NTTドコモは計画通りに2015年度中の運用開始であったが、ソフトバンクにおけるコアネットワークの仮想化は事前にはみえておらず、水面下で仮想化が進められていたことが明らかになった。
残るKDDI(au)はKDDI研究所が主体となり、5G展開を意識したネットワーク仮想化技術などの開発を進めている。KDDI研究所としては、2017年頃にネットワークの運用・障害管理の自動プロセス化技術を実装する計画である。
現在、キャリア各社では、こうしたNFV(Network Function Virtualization)導入に対する動きが活性化しつつある。また、NFVを活用した法人向けサービスの提供も増えつつあり、すでにNTTコミュニケーションズやKDDI、ソフトバンク、IIJなどの固定系キャリアが参入している。
一方、ベンダの動きに関しては、当初、ベンダ各社はキャリアにコスト削減提案を打ち出していた。しかし、現在はネットワーク運用などの柔軟性、新規サービス提供の迅速化などの提案にシフトしつつある。また、NFV時代には、供給機器におけるマルチベンダ化が進むものとみられていたが、NTTドコモとソフトバンクのケースをみると、正反対の様相を示している。NTTドコモはエリクソン・ジャパンやNEC、シスコシステムズ、富士通といったマルチベンダ、ソフトバンクではエリクソン・ジャパンのみのシングルベンダとなり、キャリアとベンダ間の結びつきや力関係が見て取れる。
さらに、これらのベンダの多くはコアネットワーク機器ベンダ(テレコムベンダ)であり、通信機器ベンダ(ITベンダ)の存在感がやや薄い印象がある。現状のNFV分野では、テレコムベンダが主体になった動きが目立ち、ITベンダはキャリアよりもエンタープライズ向けに積極的な展開を図る傾向が強い。
すでにNTTドコモはネットワークの仮想化を商用展開しているが、現在はまだ、一部導入に過ぎず、今後の展開に注目が集まる。5G時代には、柔軟にネットワークを運用できなければ、トラフィックや用途に対応できない恐れがあり、ネットワーク仮想化が必須とみられる。そのため、2016~2017年にかけ、キャリア各社のネットワーク仮想化の流れが2020年に向けた試金石になる可能性も高い。
次回は、キャリア各社の仮想化投資が今後どの程度拡大していくのか、MCAによる市場予測の結果を取り上げたい。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて10月14日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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- さらに詳しくは:キャリア向けNFV/SDN関連市場の現状と将来予測 2016年版
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- 調査資料:SDNの動向と関連市場における主要プレイヤーの戦略に関する調査2015
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