通信キャリア3社の決算が2月8日までに出揃った。そこで今回は、各社の最新の通信契約純増数の動向を整理してみたい。

2016年度第3四半期(2016年10~12月期)における各社の契約数増減は、NTTドコモが64.5万増、KDDIが59.2万増、ソフトバンクが22.9万減となった。3社の純増数順位に変化はなかったが、KDDIとソフトバンクの数値にはこれまでにない異変が起きている。
KDDIは、個人向けau回線数を示す「パーソナルセグメント」の純増数が3.6万増にまで落ち込んでいる。2015年度までは四半期ごとに数十万単位の純増をコンスタントに記録していたが、ここにきて急ブレーキがかかった格好だ。
とはいえ、これは数値の公表方法に因るところも大きい。連結子会社が展開するMVNO(UQ mobileおよびJ:COM mobile。BIGLOBEは17年1月末に子会社化したため今回の決算では対象外)の契約数を示す「MVNO契約数」は第3四半期に11.6万増(累計で35.7万契約)だった。
ソフトバンクは、減少傾向のPHSや通信モジュール(フォトフレームなど)の影響を除外するため、2014年度からスマートフォン、従来型携帯電話、タブレット等を「主要回線」と位置付けて契約数を公表している。これまで、総回線数は減少しつつも主要回線は純増を維持していたが、10~12月期は主要回線も7.0万減と、初の純減に転じた。
純減の主因はモバイルデータ通信端末とみられる。データ大容量プラン「ギガモンスター」を開始したことで「スマートフォンとの併用需要が減少」(同社決算短信)したという。解約率は、前年同期比でみれば引き続き低下傾向だが、10~12月期は0.19ポイント上昇の1.25%で、他社との開きが拡大した。

NTTドコモは64.5万増で、前四半期(7~9月期)に比べて純増数が急減しているようにみえる。しかし、前四半期は通信モジュールが63.7万の大幅増となっており、一時的な要因がなくなり元に戻ったのが実情だろう。
解約率も0.56%と低位で安定的に推移しており数字は好調そのものといえる。ただし、純増数にはNTTドコモ回線を使うMVNOの契約数動向も含まれている。MVNOの動向を除いたNTTドコモの真水の純増数は開示されておらず、他社と比較する際は留意が必要だろう。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて2月17日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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