IIJmio meeting 15:

「音声通話はなぜ高い?」「フルMVNOで××はできる?」「サブブランドは優遇されてる?」など、参加者との質疑応答を詳報

4月15日にインターネットイニシアティブ(IIJ)が開催したトークイベント「IIJmio meeting 15」。

登壇者による講演内容は別記事にて取りまとめた(総務省 内藤氏の内容IIJ 堂前氏、佐々木氏の内容)が、本記事ではイベントの最後に行われた質疑応答の内容を詳報したい。

質問に対しては、イベントの登壇者であるIIJの堂前氏、佐々木氏ならびに総務省の内藤氏が回答している。 なお、イベントの模様は当日リアルタイムで中継されており、Twitterでも質問を募集していた。本稿ではその内容も含めている。

Twitterでつぶやかれた質問の取りまとめ。サブブランド、MVNO問わず、忌憚のない(きわどい)質問も数多く寄せられていた

フルMVNOに関する質問
IIJ 佐々木 太志氏
――フルMVNO導入後、リモートで電話番号やSIMの切り替えを行う機能を提供する予定はあるか。
IIJ 佐々木氏(以後、佐々木氏):

できたらいいなと思っており、技術調査をしているところ。具体的にどういったサービス内容にするかまでは検討が進んでいない。

――1つの電話番号を複数SIMに対応させるようなことはできないのか。
佐々木氏:

今のMVNOのスキームではキャリアが対応していないので、我々もできない。フルMVNOになったらどうかについては、音声通話のフルMVNO化についてそこまで進んでいないので正直分からない。理論上はできるかもしれないが、実際できるのか、コストはどのくらいか、などの情報を持ち合わせていない状態。

――NTTドコモは「eSIM」端末を2017年中に発売すると発表しているが、IIJもそろそろ発売したりしないのか。
佐々木氏:

まだ具体的な話は何もない。

――フルMVNOと現在のMVNOをまたがって、クーポン共有や同一契約(ファミリーシェア)はできるのか。
佐々木氏:

サービスの具体的な作りのところまでは我々の検討が及んでいないというところでご容赦いただきたい。

――今後、内蔵SIMが普及した場合の契約形態はApple SIMみたいなイメージになるのか。
佐々木氏:

Apple SIMはeSIMの実装のところからすると特殊なケースなのでああいった形にはならないと思うが、非常に簡便に契約できるように、と世界の事業者間で話が進められているみたいです。

――フルMVNO化したら海外キャリアとの接続もしたいと考えているか。(個人的にでも)
佐々木氏:

是非やりたいと思っています(会場からどよめきと拍手が起きる)。

IIJ 堂前 清隆氏
――フルMVNO化したあとは、既存サービスは販売終了し順次(フルMVNOに)巻き取る見込みか。
IIJ 堂前氏(以後、堂前氏):

巻き取りはあまり考えていないですよね。

佐々木氏:

正直まだここまで(具体的な)検討は進んでいない。気になる点だと思うので、決まり次第アナウンスします。

――VoLTE通話に必要なIMSは、フルMVNO化しなくてもMVNOで持ちうる設備なのか。
佐々木氏:

実際のところHLR/HSSを持つことが大前提になるのではないかと思っていますが、キャリアでないと分からない。

SIMロック解除・端末の周波数帯対応に関する質問
総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 料金サービス課 企画官 内藤新一氏
――iPhone 5Sなど、SIMロック解除義務化前に発売された端末の解除義務遡及適用はできないのか。
総務省 内藤氏:

難しい。今後発売される端末に対して適用していく。(キャリアがSIMロック解除に応じるまでの期間を100日程度以下にする)期間の短縮については、一般的に全ての端末に適用されることになる。

――端末メーカーならびにキャリアに対し(SIMロック解除後に他社に乗り換えて問題がないよう)他キャリアの主要周波数帯に対応するよう要望・規制する考えはあるか。
総務省 内藤氏:

ここは難しい。キャリアが販売する端末はキャリアがメーカーに発注して作っているので、どうしても自分の周波数帯を優遇するのはある。他方でSIMロック解除の際に他のキャリアにも最低限対応するようにという形にはなってきている。VoLTEが一部使えないという話はあるが、最低限データと音声は使えるようにとメーカー・キャリアにお願いをしている。

――SIMロックフリー端末の「au VoLTE対応機種」は、ドコモのVoLTEも利用できますか。
堂前氏:

たまたま他キャリアでも使える場合もあるかもしれないが、VoLTEの中の色々なパラメータに違いがあるので、キャリアごとに対応が必要だと考えられる。

「IIJmio」のサービス内容に関する質問
――「通話」料金が高いのはどうしてですか。
佐々木氏:

パケット接続料は原価に適正な利潤を加えて算定することが決められているが、音声通話はその計算式の対象外。キャリアの交渉力が強いのでなかなか料金値下げが難しい状況。我々も「みおふぉんダイアル」のように別の通信会社と契約して、料金を下げたり(一定時間の)通話定額を投入している。

――(他社と比べて)IIJがゼロ・レーティングに消極的なのは、通信の公平性の観点からか。
佐々木氏:

以前のIIJmio meetingで説明しましたたが、通信の公平性も我々は非常に重視している。

――低速でもよいが、データ容量使い放題のSIMは検討していないのか。
堂前氏:

ご要望はいただいているが、今のところ提供予定はない。

――IIJmioで口座振替による支払はできないのか。
堂前氏:

確かに手間暇とコストをかければできなくはない。現状我々はそのコストを捻出できていない。ISPさんの中には既にISPの支払で口座振替を実現していて、MVNOにもそれを適用するのであれば低コストで対応できるが、IIJはISPの支払も個人向けではクレジットカードに限定していて口座振替のシステムがない。ゼロから作らないといけないので動きが鈍くなってしまう。

――海外で使える「IIJmio海外トラベルSIM」だが、LTE通信もできるようにして欲しい。また、利用できる国も増やして欲しい。
佐々木氏:

今は3Gしか使えないが、LTE化については今後検討していきたいと考えている。国についてはさすがに今の42から増やすのはもう少しハードルが高い。具体的な目途がある状況ではない。

――SMS付きデータ通信SIMから、SMS電話番号を引き継いで通話SIMに切り替えることは可能か。
堂前氏:

できません

――結婚していれば16歳でも契約できるのか。
佐々木氏:

できません。今のところ16歳・17歳は婚姻の有無、親権者等の有無にかかわらず、入力画面で弾いています。

※編集部注:

今回のイベントの中で、直近のIIJの取り組みの1つとして音声SIM「みおふぉん」の契約可能年齢を18歳に引き下げたことが紹介された。未成年者は親権者の同意が必要だが、説明時に堂前氏から「結婚していれば18歳でも成人とみなすので同意は不要」との説明があった。本質問はその内容を受けてのものと思われる。

――KDDI網のMVNO「IIJmio タイプA」で、CDMA音声+LTEデータSIMカードを提供しなかったのはなぜか。
佐々木氏:

「mineo」さんは我々より前にサービスを開始されたということで、その頃にはCDMA2000端末もまだ結構あった(ので対応されたと思う)が、後発の我々はマーケットが縮小する中でちょっと難しいよね、というのが正直なところです。

――IIJmioで、ここ最近速度の低下が顕著にみられるような気がするが。
佐々木氏:

速度は大変申し訳ないが波があって、今はその波の中でもすごく下の方にいるという認識は我々も持っている。ただちに改善するのは難しいが、波の高いところに持って行けるよう継続的に頑張っていきたいと思っています。

――高速通信オフの状態で3日間366MB超の通信を行った場合は通信規制の対象となるが、規制時はバーストが適用されないのか。
堂前氏:

バースト機能は働くが(通信規制で)絞っているので(バーストしていても)実感できないと思う。

――国際音声ローミングのオンオフ切り替え、紛失・盗難時の深夜・早朝の緊急停止はできないのか。
佐々木氏:

ローミングのオンオフは現状対応していない。深夜・早朝の緊急停止は対応しており、メンテナンスもあるので受け付けられない時間もあるが、今はシステムで対応できるようになっていると聞いている。

――MVNOでも独占販売の端末がHUAWEIを含めて販売されていることについて、IIJはどのように認識しているか。
堂前氏:

我々もできたら面白いなぁとは思うが、うちはあまりたくさん買っている訳ではないので、というところです。

移動通信市場の競争施策、MVNO全般に関する質問
――UQ mobileはテザリングができたり、販売面でもスタッフの連携があったりで他MVNOと比較し優遇されているように見える。ワイモバイル含め、サブブランドとMVNOで取り扱いに差があるのは問題ではないか。
総務省 内藤氏:

サブブランドに関してはMVNOからもご意見をいただいており、総務省としても優遇等がないか検証していくスタンス。KDDIとUQコミュニケーションズの間で回線の貸し借りがあるが、KDDIからUQに対して回線を貸す際に優遇があるかないかは、卸契約の届出をUQ側からももらっており、確認したところ特に優遇している状況にはない。それ以外の部分で優遇がないか引き続き検証していく。

テザリングは昨年秋にも指摘を受けており、SIMロック解除と絡めて、少なくともSIMロックを解除した端末については使えるようにすべきだと整理し、KDDI側で取り組んでいただいていると認識している。

ワイモバイルはソフトバンクの中の別ブランドで、優遇されているかどうか(の検証)は正直難しい。非常に安すぎて赤字覚悟で他社を排除するようなことがあったら問題だが、MVNOも増えているのでまだそこまでの状況ではないと思っている。

――MVNOはキャリアのように速度の実測値開示はしないのか。昼の速度低下に対する注意喚起を広告で見かけないが、問題ないのか。
佐々木氏:

こういった問題が今非常にご指摘を受けていて、これから先解決しなければならない課題であることは、これまでの有識者会議のご意見等も踏まえて今年度・来年度MVNO側も何か考えていかなければいけないと考えており、検討しているところ。

「IIJが率先してやれ」というのはまさしくその通りだが、競争の中で他社が「何百メガ使えます」という中で「IIJは申し訳ないですが昼間は、、、」というのは我々のビジネスがおかしくなってしまうので全体のバランスを見ながら検討していきたい。

堂前氏:

ある意味、業界団体を通じて皆さんで前に進む、という。

佐々木氏:

ルールを作っていかなければならない。その業界活動にIIJも参加していきたい。

――特定のサイトや通信に限って速度制限をしたり、逆に一定の通信をカウントフリーにするのは通信の中立性・通信の秘密に触れないのか。
総務省 内藤氏:

総務省の方では、速度制限等を行うのであればそのことをユーザーに説明した上で契約をしてください、としている。そういった部分をきちんとしているかを見ていく。

カウントフリーに関しては総務省としての見解がまとめきれていないが、料金設定のためにデータ量やパケット量をカウントするのは正当業務であり、それ自体が通信の秘密に触れる、とはなりにくいと思っています。

――最近は改善傾向だが、ソフトバンクの帯域貸出単価は他社より高いが。
総務省 内藤氏:

ルールで格差をある程度なくそうとしているが、もともとかかったコストを回収するので(会社ごとにコスト構造が違うので)差は残ってしまう。

――いわゆるキャッシュバックに規制が有名無実化していないか。街頭でも見かけるし、MVNOでもそういう動きがあるように感じるが。
総務省 内藤氏:

端末が実質ゼロ円を下回らないようにとガイドラインを作った。MNOも遵守が上手くいっていない場合があり度々行政指導等を行っているし、今後も注視していく。

――MVNOと違ってMVNEは寡占化が進んでいくと思われるが、MVNEは増えているのでしょうか。
総務省 内藤氏:

今のところ増え続けています。

――MVNO事業者は、MNOから借りた帯域に対して発行できるSIMの枚数に制限はあるのか。
堂前氏:

制限はないです。

――同じドコモ回線を借りているMVNOなのに、各社の速度の差が出るのはどうしてか。
堂前氏:

ドコモからどれだけ多く帯域を借りるか、設備投資をしているかで差が出る。

――今年の初め、総務省が通信事業者向けにヒアリングを行ったがIIJはどのような回答をしたか。
堂前氏:

これは公開していないですよね。

佐々木氏:

ええ、内緒です。

MVNOに関する消費者保護に関する質問
――国民生活センターから格安スマホに関するトラブルについて注意喚起があったが、総務省としての対策は。
総務省 内藤氏:

今モニタリングを実施していて、新しく作った消費者保護ルールについてどういう状況か確認している。その中で判明した点は、公表はあまりしないが、個別に各事業者に対して要請をしている。

我々は消費者保護ルールを作っており、そこが最低ラインだと考えているので、まずはそこを徹底してもらう立場。

――MVNOが倒産した場合に発生すると思われる混乱に対し、予防措置を検討しているか。例えばMNPができなくなったりしないか。
佐々木氏:

こういった場合の検討が進んでいるとか、消費者保護の枠組みが現時点であるかと言われると非常に難しい。総務省ガイドラインには(廃業1ヶ月前に事前に通知すべしという)廃業規定はあるが、具体的な事例が発生した際に利用者の皆様にご迷惑がなるべくかからないようにできればいいなと思っている。

――スピードテストアプリの見せかけの結果だけよくしようと操作していると疑われるMVNOが存在するが、どうお考えか。
総務省 内藤氏:

計測方法をきちんと確立していくのが一番効果的な方法ではないかと考えている。

――ソフトバンクは解約後一定期間経つとSIMロック解除ができなくなるのは消費者に対して不利ではないのか。
総務省 内藤氏:

ソフトバンクで90日間経つとできないのは個人情報保護との関係だと聞いている。一定期間で個人情報を破棄するので利用者かどうかが判断できないという。他のルールとのバランスもあり、ただちにこれが問題とも言いにくい。

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IIJ主催イベント『IIJmio meeting』取材記事