3月16日、一般社団法人テレコムサービス協会 MVNO委員会は「モバイルフォーラム2017」を開催した。イベントの内容は「ケータイWatch」の記事などを参照いただきたいが、ここではイベント全体を踏まえたMVNOの課題を取り上げたい。
今回のイベントでは、MVNO事業者や総務省の担当者など多くの関係者が登壇したが、全体を通して感じたのは「MVNOに求められる責任」だ。
三菱総合研究所 社会ICT事業本部 ICT・メディア戦略グループ 主席研究員の西角直樹氏が「MVNO市場は普及初期から普及拡大期に入ってきている」と指摘したように、MVNO市場は新たな成長フェーズにさしかかっている。市場急拡大のきしみで、MVNOに対する消費者からの苦情相談件数も増加傾向にある。
具体的なクレーム内容の一端は、登壇した総務省総合通信基盤局 電気通信事業部長 巻口 英司氏から「きちんとした説明がなかった、解約方法が分からない、高齢者なのに過剰なサービスを契約させられた」と説明があった。これらの声が国民生活センターなどに寄せられているという。参入事業者が急増し競争が激化するなか、消費者保護が後回しになっていないだろうか。
イベントでは、ケータイジャーナリストの石川温氏が通信速度測定アプリを使った速度比較結果を披露したが、利用者が集中する12時台に顕著な速度低下が見られたという。しかし、MVNOが広告等でそのような注釈を大々的に明示することはない。
そればかりか、大半のMVNOがインフラを借りるNTTドコモの名前を前面に押し出し、「高速なドコモ回線」「速い・つながるドコモ回線」「ドコモと同じ下り最大262.5Mbpsの高速通信が利用できます」「大手携帯会社のネットワークを借りているので、サービスエリアやつながりやすさは、同じです」「都市部でも郊外でも快適にご利用いただけます」などと大々的に宣伝している。
端末の対応バンドやVoLTE対応の有無など細かな技術的差異を除けば、確かにエリア面でMNOとMVNOは同条件といえる。ただし、通信速度は個々のMVNOがMNOから借りる接続帯域に大きく左右されるため、MNOと同じではない。にもかかわらず、まるでMNOと全く遜色なく使えるようなアピール方法に問題はないのだろうか。
テレコムサービス協会 MVNO委員会消費者問題分科会主査 木村孝氏は、MVNOの実効速度に関して「規格上の最高速度を強調した場合は実効速度を開示しなければならないが、MVNOは速度を強調しないので今のところは開示しない」としつつ、「MVNO委員会の中に、実効速度測定に関するタスクフォースを設置し、MVNOの実効速度に関する考え方をまとめていきたい」とイベント内で述べた。
MNOとMVNOの競争条件を等しくする「イコールフッティング」というキーワードは、SIMロックやサブブランド問題など主にMNO側に対策や責任を求める文脈で使われてきた。しかし、今回取り上げた消費者保護や実効速度開示では、今後逆にMVNOにも一定の責任が求められることになるだろう。業界挙げての自主的な取り組みに期待したい。