解約率を0.59％まで抑えたNTTドコモ、新プランの狙いと死角

NTTドコモは27日、2016年度通期決算を発表した。売上にあたる営業収益は前年度比1.3％増の4兆5846億円、営業利益は同20.7％増の9447億円となった。

稼ぐ主軸は引き続き通信事業だが、スマートライフ領域の営業利益も16年度は1119億円まで膨らみ、初めて1000億円を突破。前年度に比べて1.5倍強と成長率は著しい。同社代表取締役社長の吉澤和弘氏が「早く100万を突破したい」と語る「DAZN for docomo」は3月末で36万、直近では45万まで契約数を増やすなど好調だ。

なお「dマーケット」の一部コンテンツに変調が見られる点は指摘したい。「dマガジン」や「dグルメ」は引き続き契約数を増やしているが、「dTV」や「dヒッツ」など動画・音楽系コンテンツは軒並み伸び悩み傾向だ。このジャンルには異業種含めて参入が相次いでおり、競争激化のあおりを受けた格好だ。

コンテンツ系に不安要素は見受けられるが、実際のところそれ以外に死角ナシと言えるほど好調な決算だった。ドコモ網を借りるMVNOの契約数が含まれるとはいえ、携帯電話の契約数は7488万とこの1年で約392万も増加している。うち通信モジュールは約130万だ。「MVNO除く契約数はプラスをしっかり維持」（取締役常務執行役員 財務部長 佐藤啓孝氏）との言葉通り、"真水"のスマホ・携帯契約数も確実に増えているとみられる。

その背景には解約率が低水準で推移している点が大きい。16年度は0.59％で、前年度の0.62％をさらに下回った。パケットを家族で分け合う「シェア」を基本とした料金プランや固定とのセット割「ドコモ光」で顧客をしっかり囲い込む作戦が功を奏し、流出阻止に効果を発揮している。

決算とあわせて発表された新料金「シンプルプラン」（月額980円）の狙いも明確だ。既に新料金プランの契約数は3707万と同社契約の半数を超えている。ARPU上昇の原動力だが、通話定額が標準になっているため通話しない旧プラン契約者にとっては単なる値上げにしか映らない欠点を抱える。

シェアを組む場合、実質的には最低1780円かかるため割安感は薄れるが、それでも「家族間通話のみ無料、それ以外の通話は従量制」という立て付けは旧プラン契約者に分かりやすい。

既に新プランを利用する顧客のスイッチングが懸念されるが、ドコモ自身「お客様還元をすると決めたからにはARPUの低下は計画上織り込んで事業計画を組んでいく。加入者基盤や解約率低減が得られるし、需要喚起のアップセルも進めていく」（佐藤氏）と語り、ARPU減を招いてでも顧客を囲い込む姿勢を強調した。

新料金プランへの移行を促すためのシンプルプラン、果たして想定通りの動きを示すのだろうか。

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