料金・サービスとは別の軸で顧客獲得狙う「mineo」、MVNOのキャリア追従に限界とのあらわれか

ケイ・オプティコムは5月31日、サービス開始から3周年を迎えたMVNO「mineo」の事業説明会を開催した。2017年度を「100万契約達成」と「中長期も見据えた土台作り」の1年と位置付ける同社が6月から投入する新施策をまとめてみたい。

契約数が68万まで拡大、「デュアル」と呼ばれる音声通話機能付きSIM比率も78.1％（17年1月20日～5月9日）まで上昇しメイン端末としての利用が増加する一方、解約率を1.2％まで抑える（17年1～3月）など、足下では好調な動きを示す「mineo」。しかし、取締役 執行役員 経営本部 副本部長 橘俊郎氏は「MVNOはいよいよ淘汰の時代に入ってきたのではないか」と危機感をあらわにした。

その背景には、モバイル事業戦略グループ グループマネージャー 上田晃穂氏が指摘した「MVNOとMNOの横並び」がある。

「MVNOはサービスがそこそこで価格は安い、というところからスタートしている。一方、MNOはサービス、店舗網が充実している分、価格は高かった。しかし、MVNO側が店舗拡大やサービス拡充を進め、MNOも『docomo with』など値引きの動きがあり、価格とサービス面で似通ってきていると感じている。mineoは価格・サービスとは違う軸でオンリーワンの存在を目指す」（上田氏）。

6月からの新施策は、既存顧客向けと新規顧客向けの両サイドを投入する。

既存顧客向けには、同社が"MVNO初"と謳う長期利用特典「ファン∞とく」を6月1日から開始する。

契約事務手数料が無料になるエントリーコードと、「王国コイン」を契約期間に応じて付与していく。コインは、データ容量があたるおみくじ挑戦、プレゼント応募、イベント参加といった特典と交換できるという。

また、9月からは、機種変更や追加で端末を購入する際に電子マネーギフトがもらえる端末割引も提供、現利用者をコスト面でサポートしていく。

料金プランにも手を入れた。大容量プランとして20GB、30GBコースを新設するとともに、5GBプランは料金据え置きで1GB増量し6GBコースにリニューアルさせる。

新規顧客向けには、「HUAWEI nova lite」を含む新端末4機種を投入することを明かした。また、サポート強化に向け、直営店舗における有償初期設定サポートの開始、フィルタリングや居場所確認などの見守り機能を充実させた「ジュニアパック」の開始も発表された。

MVNOは今まで、端末・データ容量・通信速度・店舗網・コンテンツ・サポート・補償など、キャリアのサービス追従競争の側面が非常に強かった。「使い勝手はキャリアのまま、料金だけ安くできる」と思わせる宣伝が席巻するが、冷静に考えればそんな上手い話が容易に実現できるとは考えにくい。

MVNOがランチタイムなど混雑時に速度低下が起きる一方、サブブランドでそのような現象がない点について問われた上田氏は「キャリアから回線を卸してもらう原価は一緒なので、本当にあれだけの速度を出そうと思ったらどれだけ帯域を確保しなければならないかは我々もだいたい分かる。その原価を考えると（サブブランドは）MVNOとしてやっていけるのかな、というのは率直な疑問としてある」と述べた。裏返せば、今のMVNOの枠組みではキャリア並の速度提供が困難と読み取れる。

他方、上田氏は「我々はそれほど速度は早くない」ものの「サポート、料金の分かりやすさなど」が支持され、現在では他MVNOからmineoへの転入も一定数いると明かした。利用者がMVNOを選ぶポイントが、キャリア追従の側面だけではないことを示唆している。

mineoにはデータ容量を他者に分け合う「パケットギフト」、コミュニティ「マイネ王」など、他社にはないサービスを数多く展開している。またMVNOの中には一部コンテンツをデータ容量に含めない「カウントフリー」など、キャリアにない付加価値を提供する事業者が増えている。

キャリア追従ではない、MVNOならではの機能提供が求められる時代に変化したと言えるだろう。

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