本誌既報の通り、総務省は21日、MVNO「Smart Mobile Phone」を提供するスマートモバイルコミュニケーションズに対して行政指導を実施したと発表した。
総務省及び全国の消費生活センターに苦情相談が寄せられており、利用者からの解約依頼に対し適切に処理がなされなかった事案などが業務上認められたため指導が行われたという。
そこで今回は、移動通信サービスに対する苦情・相談件数の推移を取りまとめてみたい。
上のグラフは、国民生活センターと全国の消費者センター等に寄せられる苦情・相談を取りまとめた消費生活相談データベース「PIO-NET」における、移動通信サービスに対する苦情・相談件数の推移である。
2016年度の苦情・相談件数は約2.5万件で、実数としては2015年度からわずかながら減少している。しかし2010年度以降の状況を見ると「高止まり」と表現した方が適切だろう。
PIO-NETに寄せられる苦情・相談の総件数に占める割合は2.83%で、2010年度以降6年連続で比率が上昇している。
4月には、プラスワン・マーケティングのMVNO「FREETEL」が自社サイト上で「『業界最速』の通信速度」などと記載したことが、景品表示法に違反しているとして消費者庁が措置命令を行ったことは記憶に新しいところだ。
とはいえ、不公正な競争環境に陥っているのはMVNOだけの話ではない。
総務省が22日に開催した「消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合」では、通信キャリア3社に対する覆面調査で「自動更新の仕組みが適切に説明されなかった」例が全体の66%、「解約月に基本料金が日割り計算されるか否かの説明がなかった」例が76%も見られたとの報告がなされた。
また、電波状況が不十分と判明した場合や、契約前の説明・書面交付が不十分だった場合に契約解除が可能な「確認措置」制度の運用では、説明不足を理由に解約を希望してもNTTドコモは確認措置として取り扱っていなかったことが判明した。
確認措置の申出として把握するKDDIとソフトバンクに比べて、NTTドコモは「契約解除に応じた数が著しく少ない」こともあり「抜本的な改善が必要」とまで指摘されている。
中期戦略でマーケットリーダー宣言を行った同社がこのような状況では、業界全体の問題と言われてもやむを得ないだろう。実際の現場を担うのは販売代理店ではあるが、MNO・MVNO各社は代理店だけに責任を押しつけるのではなく、公正・適切な販売体制の構築に向けて主体的に対策を講じる必要に迫られている。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて6月23日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |