総務省は、今年7月18日に「将来のネットワークインフラに関する研究会」で検討されてきた報告書を公表した。
同研究会では、2020年から2030年頃までを想定して、ICTを最大限に活用する社会を支えるネットワークインフラを実現するための技術課題、推進方策等について議論されてきた。
ブロードバンド回線による4K配信や現行LTEの100倍の伝送速度を実現する5GなどICTサービスの高度化・多様化が進む一方で、IoT機器の普及などにより、膨大な機器がネットワークに接続されるなか、通信量は年間2倍程度の割合で増大を続け、2020年代には現在の1000倍以上まで増加すると見込まれている。
こうした高度なサービスを支えるネットワークインフラはどうあるべきか。同報告書のなかでも指摘されているが、今後顕在化してくる課題となるのではと懸念されるのが、「ネットワークインフラを保守・運用する人材の確保」の問題ではないだろうか。
少子高齢化に伴い、日本の労働人口は緩やかに減少していく傾向にあるが、通信建設業界においては平均を上回るスピードで減少していくと予測されている。
弊社では、通信インフラ工事会社に関する定点調査を行っているが、そのなかでは一部のエリア(特にルーラル)での技術者不足がすでに顕在化しつつある。相対的に仕事量が少ないルーラルエリアでは、都市部や他の業界への移動が起こっており、これらの状況が深刻化すれば、一部の地域では通信設備の保守や災害被害時の迅速な復旧などに支障をきたすことが考えられることから、人員減耗対策は喫緊の課題と位置付けられる。
追い打ちをかけるのが「ネットワークインフラの保守・運用に携わる人材」を供給する電気通信工学系専攻の大学卒業者数が、近年減少傾向で推移していることである。これらのデータからも、将来的に、「ネットワークインフラを保守・運用する人材」の確保が困難になっていくことが予想される。
更には通信建設業界の高齢化も進行しており、若年層の就労者不足はレガシー系技術の継承にも支障をきたすなど、高齢技術者を再雇用することで手当てしている現状もある。
競争激化でコスト削減だけに目を向けすぎた結果、明日の通信インフラネットワークを支える人材が急激に減少しているという問題は深刻である。
将来に渡り持続可能な通信インフラネットワークの運用という観点から、業界全体で、改めてこの問題に取り組む時期に来ているのではないだろうか。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて7月21日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |