モバイル業界スナップショット:

「SIMカード価格の透明化」をめぐる、貸す側と借りる側の言い分

総務省は9月1日、電気通信事業法施行規則(昭和60年郵政省令第25号)等の一部を改正する省令案等に対するパブリックコメントと、寄せられた意見に対する考え方を公表した。

改正案の注目点

今回の改正案のポイントはケータイWatch記事にて既報の通りだが、最大の注目点は「SIMカード」と「回線管理機能」の機能・利用料金に関する取扱いだ。いずれも、MVNOが通信キャリアに貸与料・利用料を支払っているが、MVNO側からは「算定方法が不透明で割高感がある」との声があった。

そこで今回、両項目を接続料規則に定めて、不当な差別的取扱いの有無を総務省がチェックできるようにした。SIMカード貸与料については、原価と利潤の算定方法にまで踏み込んでいる。

MVNOと通信キャリア、それぞれの言い分

総務省は「通信を成立させるために不可欠な構成要素で、かつMVNOに費用負担が求められる」点を踏まえ、SIMカードと回線管理機能を接続料規則に定める方向性を打ち出した。

しかし通信キャリア側は「SIMカードについてはその他に代替する方策があり不可欠ではない」点や、そもそも両項目とも「第二種指定電気通信設備」ではない点を主張し、接続料規則への記載はそぐわないと反対の意見を述べた。また「通信に不可欠」という理由で今後恣意的に範囲が拡大しないよう、接続料規則に定める内容を明確にすべきだとも要望した。

代替案として、接続料規則ではなく「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係にするガイドライン」等に規定すれば充分だとの考え方も示した。

これに対し、MVNO側は「ガイドラインへの規定では料金の適正性が確保されないおそれがある」と懸念を示し、あくまで接続料規則に定めるよう求めた。

最終的に総務省は、今回の改正がeSIMなどに対象が拡大しないよう小幅な修正を加えつつ、公正な競争条件の確保の上で重要であることに鑑みて接続料規則に定める方向で、省令等の整備を進める方針だ。

新たなルールが移動体通信市場にどのような影響をもたらすのか、今後とも注視していきたい。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて9月8日に公開された記事となります。
最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。

メールニュース「Mobile News Letter」
最新コンテンツを週1回配信中

モバイル業界スナップショット