現在、携帯各社の高速化競争のコア技術の1つが、複数の周波数帯を束ねてひとかたまりにして送信する「CA(キャリアアグリゲーション)である。もともと、「LTE-Advanced」技術を構成する要素の1つとして規格されたもので、国内では2014年夏からKDDIが導入し、その後各社の採用が続いている。
今回は、CA化が無線機ベンダー再編に及ぼす影響について、考えていきたい。
携帯各社の提供しているLTEでは最大20MHz幅の帯域までしか利用できないが、CAを利用すれば、例えば2GHz帯と800MHzを束ねる(2CA)ことで広帯域化を実現し、データ通信速度の高速化が可能となる。これを更に応用し、現在では3つの周波数帯を束ねる3CAや、KDDIであればUQコミュニケーションズ、ソフトバンクであればワイヤレスシティプランニングというように異なる会社間によるCA化による高速データ通信サービスも提供されている。
2020年の5G商用化を前に、CAの重要性は益々増しているが、実はそれを実現していくには、携帯基地局向け無線機ベンダーの統合化という問題を解決していく必要がある。具体的には、1つのエリアで、例えば800MHzと2.1GHzで無線機ベンダーが異なる場合、インターフェースも異なるためCAが提供できないのだ。
但し、こうした問題は、携帯会社によって事情が異なっている。NTTドコモはNECと富士通などが無線機ベンダーだが、こうしたところにはいわゆる『NTT仕様』と呼ばれるインターフェースをNTTドコモが供給することで解決している。つまり、無線機ベンダーを統合化する必要がない。
これに対してKDDIとソフトバンクはどうか。無線機ベンダーの統合化を推進していかなければCAが実現できないという状況にある。特にトラフィックが集中する都市圏では周波数の利用効率向上の観点からもCA化が欠かせない。1つのエリアに複数の無線機ベンダーがあった場合、オセロのようにそのエリアの無線機を1社の無線機ベンダーに切り替えていく必要があるのだ。
こうした事態は、今後の無線機ベンダーのシェアに大きなインパクトを与えそうだ。実際、弊社が関係者に聞いているところでは、特に外資系ベンダーの勢力圏で地殻変動が起きつつあるとされている。
無線機ベンダーとしては、当然だが5Gへの採用ベンダーに選定されるというシナリオを描いている。そのため、このタイミングでひっくり返されてしまう側になることだけは避けたいはずだ。携帯各社へ提示する無線機の価格競争も激化しているようで、CA化を軸に無線機ベンダー再編の波が本格化していきそうだ。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて9月22日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
- 2020年度の5G投資は1000億円 全体投資額の10%未満と予想
- 16年度の国内無線機市場は1413億円 調達先ベンダはキャリアごとの違いが鮮明に
- 2016年度国内無線機市場で国内ベンダが45%のシェアを獲得 今後に期待の中国ベンダ
- 調査資料:携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測 2017年版
- 特集:携帯基地局市場と設備投資の実態 2018
- モバイルキャリア3社の設備投資額、17年度は530億円増を見込む
- キャリア別にみた3G/LTE/LTE-Aにおける無線機ベンダの変遷