11月あたまに出揃った通信キャリア3社の決算をもとに、主要数値における各社の状況を比較する「グラフで比較するキャリア決算」。2回目は1契約あたり収入に焦点をあてる。
売上を契約数で割って算出される「1契約あたり収入」は、NTTドコモとソフトバンクがARPU(1契約回線あたり収入)、KDDIがARPA(1契約者あたり収入)の数字を開示している。2017年度第2四半期は、KDDIが前年同期比200円増の6540円、NTTドコモが同290円増の4710円、ソフトバンクが同230円減の4340円だった。
なお、NTTドコモのARPUには光回線収入が、KDDIとソフトバンクのARPA/ARPUにはサービス(コンテンツなど)収入が含まれており、各社で定義が異なっている。
ARPAが前年同期比200円増となったKDDIだが、その内訳は、モバイル通信での伸びが130円、コンテンツや物販・決済など付加価値(非通信)部分での伸びが70円。付加価値ARPAの順調な伸びは、通期経営目標である「通信企業からライフデザイン企業への変革」が順調に進んでいることを裏付ける結果といえる。
NTTドコモのARPU増をけん引するのは「ドコモ光」だ。この1年で契約者数が1.7倍の418万まで増加しており、ARPUも前年同期比で150円の伸びとなった。また、新料金プランの契約数が年間で18.6%増えたことを受け、音声ARPUも140円増となった。一方でパケットARPUは前年同期から変わらずの2990円だった。
伸び悩みの背景には、パケットが無駄なく利用できるシェアパックの普及があるとみられる。
ソフトバンクは、通信ARPUが前年同期比220円減、端末保証サービスやコンテンツの収入を示すサービスARPUが同10円減となっている。比較的安価な「Y!mobile」契約の占める割合が増加したことに加え、光回線契約による値引き「おうち割 光セット」の累計適用件数(移動通信サービス)がこの1年で約1.6倍の713.5万まで増加し割引が膨らんだ影響を受けた。
ソフトバンクは、いずれも顧客基盤を拡大するための先行投資と位置付けており、実際に契約数の純増反転や解約率の低下として数字に表れていると言える。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて11月17日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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