グラフで比較するキャリア決算 (3):

流出抑止の効果で好転しはじめた各社の解約率

通信キャリア3社の2017年度上期決算をもとに、主要数値における各社の状況を比較する「グラフで比較するキャリア決算」。最後は通信契約の解約率に焦点をあてる。

各社の解約率推移を、定義も含めて整理する

NTTドコモとソフトバンクは解約率の数字を2種類開示しているため、スマートフォンや携帯電話などの解約動向によりフォーカスされている数字(グラフの実線)をもとに比べてみると、2017年度第2四半期(2017年7~9月期)における各社の解約率は、NTTドコモが0.47%(前年同期比0.05ポイント増)、ソフトバンクが0.74%(同0.04ポイント減)、KDDIが0.79%(同0.07ポイント増)となった。

なお、この数字は単純比較ができない点には注意が必要だ。NTTドコモとKDDIは、自社ブランドからサブブランド・MVNOへの乗り換えを解約とカウントするのに対し、ソフトバンクの場合は「ソフトバンク」と「Y!mobile」間のMNPは解約とみなしていない。サブブランドへの流出が解約率を押し上げない工夫がなされている。
一方、KDDIの数字はパーソナル(個人向け)が対象となっており、その他セグメントの影響は除外されている。

もともと低位安定のNTTドコモ、ソフトバンクとKDDIも低下トレンドに

このように3社間で単純比較はできないものの、個別に経年推移を追うことはできる。

顕著に改善傾向を示しているのがソフトバンクだ。2年前には1.2%程度あったが、今期は2015年度以降で最も低い0.74%まで下がっている。「Y!mobile」が受け皿となり、他社やMVNOへの流出をうまく抑えていることがうかがえる。

KDDIも解約率は「改善トレンド」(田中孝司代表取締役社長)との認識を示している。UQ mobileなどグループ内MVNOへの乗り換え分を除けば、前年同期比でほぼフラットの状況まで解約率が低下しているという。

NTTドコモの場合、大きな改善傾向はみられないが、そもそも他社の数字を大きく下回っており、低位安定の状況が続いている。

3社とも解約率が低下しているのは、各社が囲い込みを進めた結果、解約率を押し上げる要因だったMVNOへの流出が弱まったことがその背景にある。MVNO側の巻き返しなるか、顧客争奪戦の今後にも注目だ。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて11月24日に公開された記事となります。
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