総務省は昨年12月に「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」を立ち上げた。携帯キャリアとMVNOとの間の同等性、ならびにMVNO間の同等性の確保が議題の中心で、会合は既に3回開かれている。これまでの議論を整理したい。
MVNO各社がやり玉にあげているのが、サブブランドの「Y!mobile」と「UQ mobile」だ。
混雑が集中し通信速度が低下する"鬼門"のランチタイムであってもサブブランドが安定した速度を出している点について、現行のコスト構造では実現できないとMVNO各社は指摘した。「サブブランドはMVNOの2~3倍の容量で品質を設定しているのではないか」(楽天)と、具体的な水準に踏み込むMVNOも見られた。
サブブランドの通信品質は、今の料金体系で提供できる範疇を超えているため、通信キャリア側から何らかの優遇を受けているのではないか、という問題提起だ。
一方の通信キャリア・サブブランド側は優遇を否定。「TVCMやショップ展開にかかるコストは弊社の経営の中で自身で適切に負担」(UQコミュニケーションズ)、「ワイモバイルも単体として収益性に配慮」(ソフトバンク)と、採算を度外視した取り組みではないことを強調した。
ひとくちにサブブランドといってもY!mobileとUQ mobileでは事業構造が大きく異なるため、問題は複雑だ。
Y!mobileについて、ソフトバンク側は「ブランドが異なるのみで、他MNOの低料金プランと位置づけは同じ」で、あくまで複数サービスの提供形態の一つにすぎないと主張している。
他方UQ mobileは、KDDIのネットワークを借りる一方、自社が持つのネットワーク(UQ WiMAX)をKDDIに貸す立場でもある。KDDI網を借りるMVNO各社は、キャリアアグリゲーションによって間接的にUQの回線も使っていることになる。インフラ全てを借りるMVNOと、最終的には一部は自社回線でまかなえる(帯域貸出料として回収できる)UQ mobileはそもそもコスト構造が異なると考えるのが自然だ。
また2ブランドとも、料金プランにおける上限データ量は7GB(期間限定施策は除く)で、かつパケットシェアにあえて対応しない(Y!mobileは繰り越しにも非対応)など、過度にデータ通信が発生しないような仕掛けもセットしている。20GB・30GBの大容量プラン、パケットの繰り越し・シェアサービスを提供し"大盤振る舞い"真っ最中のMVNOとは極めて対照的だ。
「公正」「公平」な市場環境は必ず整備されるべきだし、差別的な取扱いがなされぬよう絶えず監視する必要がある点にも同意できる。しかし、条件やプラン設計がまちまちな中では、何をもって公正なのかを明示するのは非常に難しい。
実際、1月20日にインターネットイニシアティブが開いたトークイベントの席上、同社の佐々木太志氏は「(会社としての意見は会合で発表したものだが)私個人としては今の競争環境は決して不公平だとは思っていない」と発言するなど、MVNO側でも今の市場環境の妥当性に対しては見方が分かれている。
すれ違う議論に落としどころは見つかるのだろうか。通信キャリアにとっても、サブブランドにとっても、そしてMVNOにとっても、納得のいく「公平性」が確保されるよう、今後の議論を見守っていきたい。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて1月26日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |