通信キャリア3社の2017年度第3期決算をもとに、主要数値における各社の状況を比較する「グラフで比較するキャリア決算」。最後は通信契約の解約率に焦点をあてる。
中身を見る前に、まずは各社の「解約率」の定義を改めて確認したい。
NTTドコモは、MVNOなどの影響を除いたドコモブランドの「解約率」と、その中でスマートフォンや従来型携帯電話(フィーチャーフォン)などの動向に絞り込んだ「ハンドセット解約率」を開示している。
同様にソフトバンクも、スマートフォン・従来型携帯電話・音声SIMの動向から算出される「携帯電話解約率」と、タブレットやモバイルデータ通信端末も対象に加えた「主要回線解約率」を公表している。
対してKDDIは、個人向け(パーソナルセグメント)のスマートフォンと従来型携帯電話の状況を「au解約率」として発表している。
各社公表数値から、スマートフォンや従来型携帯電話に限った解約率(グラフの実線)を比較すると、2017年度第3四半期における各社の解約率は、NTTドコモが0.51%(前年同期比0.08ポイント増)、KDDIが0.78%(同フラット)、ソフトバンクが0.83%(同0.06ポイント減)となった。
解約率の改善が顕著なのはKDDIだ。2017年以降はソフトバンクを上回り3キャリアで解約率が最も高い状態となっていたが、今期は逆転している。前年同期比でみてもプラスマイナスゼロとコントロールがうまく働いている。KDDI田中社長は「月次ベースだと2017年12月は前年を下回った」と、新料金プランの導入を契機とした抑制に自信を見せた。
解約率の抑え込みを強調するのはソフトバンクも同様だ。2月7日に行われた決算会見の席上、3つめの解約率ともいえる「スマホ解約率」をプレゼン資料に盛り込み、2年前の1.30%から0.84%まで改善したことを示している。なお「携帯電話解約率」も2年前の1.21%から0.83%へと同様に低下している。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて2月23日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
- 19年度:
通信キャリア各社の2019年度決算出揃う、年間での契約増減状況は - 19年度 3Q:
「各社とも純増」ながら、三者三様の状況となった契約数 - 19年度 2Q:
通信モジュールの動向で悲喜こもごもとなった「契約純増数」 - 19年度 1Q:
各社の「契約純増数」と「解約率」を整理する - 18年度:
携帯純増数、18年度実績と19年度予測を整理する - 18年度 3Q:
通信モジュールやPHSの動きが左右した各社の契約純増数 - 18年度 2Q:
契約純増数でソフトバンクがNTTドコモを抜き2位に浮上 - 17年度 4Q:
通信モジュールの動向が数値変動に直結した「契約数」 - 17年度 3Q:
通信モジュール契約の獲得で勢いに差が出た「契約純増数」 - 17年度 2Q:
キャリア3社の契約純増数、各社の好不調トレンドに変化の兆し - 17年度 1Q:
キャリアの純増数から見えてくる、各社が抱える悩み - 16年度:
通信キャリア3社の年間携帯純増数と解約率を整理する - 16年度 3Q:
出揃った通信キャリアの純増数、これまでにない異変も - 16年度 2Q:
サブブランド、MVNO、モジュールの動向に左右される通信キャリアの「純増数」 - 16年度 1Q:
約2年ぶりにKDDIが純増数トップに、ただし数字の持つ意味合いに変化も - 15年度:
「音声定額」と「MVNO」が変えた通信大手3社の純増競争の潮目 - 契約数推移:
1億5000万を超えてなお増加する携帯電話の契約数 - 15年度 3Q:
携帯キャリア3社の決算から契約数に関する指標を比較する - 15年度 上半期:
純増競争の異変に垣間見える携帯各社の『数』に対するスタンスの違い - 14年度 上半期:
キャリア3社の決算内容のKPIから推測する競争力の現状分析