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再燃する携帯大手3社の「テザリング有料化」問題

最大の商戦期のなかにあって、改めて注目を集めているのが「テザリング有料化」の問題である。改めてと表現したのは、昨年の年度末も同じような騒動となったためだ。当時もテザリング有料化を目指した携帯大手3社だったが、その時には結局1年先延ばししたことで一旦終息したが、ここへきて再び各方面から議論が起きてきている。今回は、テザリング有料化の問題について取り上げていきたい。

テザリングとは、スマートフォンの通信機能を使ってパソコンなどをインターネットへ常時接続する機能のことである。スマホ単体でネットに接続する場合と比較して、やり取りするデータ量が大きいのが特徴で、携帯回線のトラフィック圧迫を懸念する携帯会社は、通常の携帯料金とは別建てのテザリング料金の導入を目指してきた。

現状、携帯大手3社のテザリングへの対応は、大きく下記のようになっている。

なお、上記以外のY!mobileやMVNOなど格安スマホ会社は、一部端末のテザリング非対応を除けば、基本的にテザリング料金は無料となっている。その背景には、競争上の理由以外にも、スマホからテザリング切り替えを識別する技術的課題の難しさもあるようだ。

携帯大手3社では、NTTドコモが当初2018年3月まで無料で、それ以降は月1000円が発生するとしていたが、無料期間の延長を発表している。これに対してKDDIは2018年4月以降、ソフトバンクは2018年6月からの有料化を表明しており、それぞれ月500円を利用者から徴収するとしている。

そもそも携帯会社としては、テザリングを付加価値として有料化を目指してきたものの、利用者にすれば、20GBや30GBのデータ容量を購入しているのに、使い方(テザリング)が違うだけで追加料金を払わなければならないのか、という素朴な疑問が噴出。携帯各社は無料キャンペーンを延長することで、その場を凌いできた。

しかし、いつまでも無料キャンペーンというわけにもいかず、今回、KDDIとソフトバンクは料金を引き下げる(当初は月1000円だった)ことで、何とか折り合いをつけようとしてきたのではないかと推測される。

問題は、電気通信事業法にも書かれているが、利用者に何からの制限を課す際には合理的な理由が求められるということである。既に携帯各社は、通信ネットワークの混雑回避のために、利用容量の制限を導入しているわけで、テザリングによるネットワーク設備への負荷増ということを理由に有料化に踏み切るのであれば、同じように制限がかかるため、根拠としてどうかと思う。

果たして携帯各社は本当に有料化へ突き進んでいくのか。それが、結果として携帯会社の付加価値を高めることにつながるのか。引き続き注視していきたい。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて3月23日に公開された記事となります。
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